コミッショニングレターVol.19 No.3(3月号)

2022/03/17掲載

第18期通常総会について

特定非営利活動法人建築設備コミッショニング協会の第18期通常総会と講演会および技術交流会を下記の通り開催致しますので、ご案内申し上げます。

 

日 時   2022526日(木)13時30分 ~

 場 所  TKP新橋カンファレンスセンター ホール15A15階)

東京都千代田区内幸町1丁目3-1 幸ビルディング

https://www.kashikaigishitsu.net/facilitys/cc-shimbashi-uchisaiwaicho/access/

 スケジュール

通常総会   13:3014:30(予定)

講演会     15:0016:45(予定) <講演内容は調整中です>

技術交流会 17:0019:00 同会場 ホール15C

 WEB配信について

総会の進行状況をWEBで配信予定としますが、安定的なインターネットでのWEB交信の実施にはリスクがあるため、WEBによる議事の採決はいたしません。つまり、あくまで議事進行をWEB配信するだけに留まりますのでWEB配信に参加の正会員も委任状をお出しください。当日、WEBで交信が可能な会員からのご意見やご質問を受け付けることはする予定です。

なお、正会員の方で、総会を欠席される方、WEB配信を希望される方は、必ず委任状のご提出をお願い申し上げます。

     詳細は下記のBSCAホームページをご確認下さい。

http://www.bsca.or.jp/event/?p=1564

ACSES/Cx公開ワークショップ開催案内

コミッショニングに活用するという視点で開発してきた空調システムエネルギーシミュレーションツールACSES/CxAir-Conditioning System’s Energy Simulation for Commissioning)をオープンソースとして公開するワークショップを開催します。本ツールは京都大学および岡山理科大学の吉田研究室が中心となり20年以上に亘って開発されたもので、BSCAの先導的コミッショニング事業などでも活用されてきました。本ツールは次のような特徴を持っています。

 

1. コミッショニングに活用することに重点をおいて開発しているのでBEMSの計測データを取り込むインターフェーズを有し、実運転のデータとシミュレーション結果とを直接比較することができるような構造をもっている。

2. MATLAB/SIMULINKというGUIGraphical User Interface)を有するプログラミング環境で開発されているため、空調システムの設計図を描くような感覚でシミュレーションモデルが作成できる。

3. 最近のBEMSでは1分サンプルでデータ取得して検証がなされるようになってきている。これと呼応して高い分解能(リゾリューション)で実システムの検証が行えるようにシミュレーションのサンプリング時間は1分である。

4. 本体のシミュレーションツールだけではなく、メーカーから提供される性能曲線に基づいてモデルを作成するための画面読み取りデジタイザー、種々の形式のBEMSデータを変換・結合するツール、シミュレーション結果を機能的にハンドリングする処理するツール、空気線図計算ツールなど、各種のサブ・アプリケーションを備えている。

5. 開発したモデルを最適化のための目的関数として利用して最適解を見いだす、CFDツールなど他のツールと結合して連成シミュレーション(Co-Simulation)を行う、など、作成したモデルの拡張利用ができるというオープン性がある。

 

■開催日時 2022510月 毎月12時間程度 

(第2回目以降の開催日時は仮日程であり5月初旬に参加登録者と調整予定)

プログラム(予定<2回目以降は仮>)

第1回  5/17()  15:0017:30 ACSES/Cxの概要

第2回  6/ 8(水) 15:0017:30 ACSES/Cxの機能と基礎

第3回  7/ 7()  15:0017:30 熱源システムシミュレーションモデルの解説と事例

4回  8/18()  15:0017:30 2次側空調システムシミュレーションモデルの解説と事例

第5回  9/20()  15:0017:30 建物全体空調システムシミュレーションの解説と結果処理事例

第6回 10/18()  15:0017:30 空調システムの最適設計・運転などへの応用事例

第7回 11/15()  15:0017:30 予備日

■ 開催形態 

ZOOMによるオンライン講義

■ 講師

吉田 治典 (BSCA理事長)

■ 参加費

無料

■ 参加申込

当協会のホームページで受付

■ 参加資格

BSCA会員(賛助会員を含む)

■ 参加に要する技術的資質・機材・アプリケーションプログラム

  当協会のホームページにてご確認下さい

http://www.bsca.or.jp/event/?p=1588

Cx事例シンポジウムin東京 開催報告

―カーボンニュートラルに向けた取り組みとコミッショニングの推進を目指して-

 

2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことが宣言され、省エネルギーを徹底し再生可能エネルギーを最大限活用することが示されました。カーボンニュートラルの実効ある実現に向けてコミッショニングの重要性と必要性は高まってきています。

そこで、ますますの推進を目指して、BSCACxPEが携わったCxプロジェクトのみならず、発注者(建物オーナー)、施工者などから、実践的な実例を発表いただく知見の共有の場として本シンポジウムを企画開催しました。開催は当初WEB併用開催でしたが、直前にコロナ流行の兆しが高まったため、WEB開催へ変更して、オンライン参加で77名が講師5名の講演とパネルディスカッションに耳を傾けました。

 

はじめに、BSCA副理事長・東京大学の赤司泰義より、カーボンニュートラルに向けてZEB、ZEH普及を推進するためには、費用対効果をデータ駆動型の評価で行うことが不可欠となり、このような評価においてCxのプロセス管理は親和性が高く強力なツールとなるため、適用事例を本シンポジウムのプログラムとした趣旨説明を行いました。

 

第一部では、早稲田大学 小林延久様による基調講演「カーボンニュートラル実現に向けた需要家電力資源の活用のあり方」と東急電鉄㈱ 山田信太朗様によるCx事例「東急電鉄空調設備CBM化検討のCx」が報告されました。

質疑応答では、デマンドレスポンスにおける柔軟性創出ポテンシャルについて闊達な意見交換がなされ、柔軟性創出ポテンシャル評価において、蓄熱システムが適正運転を成されているか否かを見定めるためにもCxは重要であることが再確認されました。また、東急電鉄様の取り組みでは、オーナーがCxを発注し、オーナーが建築設備の理解を深めることで、”経営戦略としての省エネ”および”業務効率化”に繋がることをご報告いただきました。

 

第二部では、大林組 小関由明様による「1.大林組技術研究所本館における既存Cx事例」、九電工㈱ 佐藤文秋様による「2.蓄熱による省エネルギーと電力調整力」、(一社)ビルディング・オートメーション協会 小澤浩様による「3.空調熱源を使ったデマンドレスポンス 実証と今後の課題」が報告されました。

質疑応答では、デマンドレスポンスの上げデマンドレスポンスにおける時間区切りの制度について意見が交わされ今後のデマンドレスポンス市場について関心が高まっていることがうかがえました。

パネルディスカッションでは、赤司先生より2つのテーマ「データ駆動型の運用は設計・施工と無関係か?」「コミッショニングのビジネス化」について5名の講演者をパネリストとして議論を行いました。日本の建設業界でのコミッショニングに寄せる期待と現状のコミッショニングという用語のパブリックイメージ是正など多角的な視座での議論となり、カーボンニュートラル社会に向けて、潜在的にCxPECxTEのような人材への期待はあるものの、Cx業務についてオーナー認知が低いことなど課題が改めて浮き上がってきました。

 

新型コロナウイルス感染拡大防止で、完全なオンライン形式での開催となりましたが、結果は大きなトラブルも無く配信が出来て、大変有意義なシンポジウムとなりました。

 

 

<シンポジウムスケジュール>

10:0010:10 趣旨説明 BSCA副理事長・東京大学 赤司泰義

10:1011:10 基調講演:「カーボンニュートラル実現に向けた需要家電力資源の活用のあり方」 

早稲田大学 小林延久

11:1011:50 Cx事例:「東急電鉄空調設備CBM化検討のCx

           東急電鉄㈱ 山田信太朗

11:5012:00 質疑応答 第一部 基調講演・Cx事例

13:0513:45 第二部:1.大林組技術研究所本館における既存Cx事例

大林組 小関由明

13:4514:25 第二部:2.蓄熱による省エネルギーと電力調整力

九電工㈱ 佐藤文秋

14:2515:05 第二部:3.空調熱源を使ったデマンドリスポンス 実証と今後の課題 

(一社)ビルディング・オートメーション協会 小澤浩

15:0515:15 質疑応答 第二部

15:2516:00 パネルディスカッション コーディネーター:赤司泰義

※敬称略

CxPE座談会報告 関西(その1) 第2回

建築設備コミッショニング協会(BSCA)では、「Cxの普及並びにCxPEの活躍方法に関する意見交換会」としてCxPE座談会を東京1回)、関西(2回)にて実施いたしました。Cxレターでは全3回のCxPE座談会で議論された内容を下記の通り9回にわけてお伝えします。

Cxレター20222月号 CxPE座談会 関西その1 1回目

Cxレター20223月号 CxPE座談会 関西その1 2回目

Cxレター20224月号 CxPE座談会 関西その1 3回目

Cxレター20225月号 CxPE座談会 関西その2 1回目

Cxレター20226月号 CxPE座談会 関西その2 2回目

Cxレター2022年7月号 CxPE座談会 関西その2 3回目

Cxレター20228月号 CxPE座談会 東京1回目

Cxレター20229月号 CxPE座談会 東京2回目

Cxレター202210月号 CxPE座談会 東京3回目

 

 

CxPE座談会(関西その1) 参加者―

吉田治典(BSCA理事長)、天野 雄一朗(四国電力㈱)、小林陽一(㈱安井建築設計事務所)

松下直幹(㈱コミッショニング企画)、辻裕伸(関西電力㈱)、本地川知行(三機工業㈱)

井守紀昭(㈱大林組)、大石晶彦(㈱大林組) 

 

Cxと設計について

[] 松下氏の会社や天野氏の部署はCxを第3者の位置づけで実施するCxFという位置付けであるが、設計事務所やゼネコン、サブコンの設計部門ではクライアントから依頼を受けて設計を行う立場である。そこで、設計という観点でCxをどのように位置付けるか、というテーマで意見をもらいたい。

 

[小林] 学校施設の設計を担当しているが、松下氏にCxを担当してもらい、設計を進める上でも手戻りがなく、進められている。チェックが必要な部分の指摘を頂けてCxは有意義であると実感している。

[吉田] 設計者にとって有意義であると評価して貰えるとベストだが、中には指摘を受けることで苦々しい経験として感じる設計者もいるので、設計フェーズのCxの進め方は非常に難しいものだと思う。

[] 設計事務所が設計業務とは別にCx業務を単独で実施するということは今後考えられるのだろうか?

[小林] 実際やろうとすると難しい部分があると思う。

[] 設計とCxの両立は、別の設計事務所が設計を担当し、ゼネコンは設計施工の設計をする。それを設計事務所がCxの立場でCx業務を実施するということで可能ではないだろうか。

[小林] そういう事もあれば良いと思う。

[大石] ゼネコンは設計施工を原則としており、設計だけを受ける例は少ない。建物性能の検証を含めて設計施工で受けている。そのため、Cx費用を設計料の他に頂くことは難しい。性能検証をビジネスとして取り組もうとした時期もあったが、今は立ち消えてしまっている。CxPE資格を持っていても、活かしているかというと活かしてはいない。

[松下] サブコン、ゼネコン側から見たらCx費用を別途もらうという発想はないと思う。オーナー側から必要だと言ってもらわない限りは難しい。BSCAがゼネコン、サブコンに対して、ビジネスとしてCx事業をしたらどうかと勧めても現実は難しいのではないか。

[大石] ゼネコンでは、Cx業務だけとか、設計業務だけを受託してフィーをもらうという発想はない。1年~2年後の検証業務でフィーを頂くというのは、工事会社としては好まれない。

[松下] 施工会社は技術部門より工事部門が強い傾向があると思う。設計部門の新たな活躍の場として調査・設計・施工フェーズのCxに参画し、ここで活躍し始めると社内での地位もより高まるのではないか。

リニューアル工事で、調査フェーズからCxを行い、そこに元施工者も参画することは(既存の場合、まずは元施工者に協力を要請することが多い)、施工者の意識として、設計や施工も行いたい、さらにはそれを成功させなければならない、したいという施工者側のモチベーションの向上につながると思う。そこを引き出すことがCxの重要なポイントだと思っている。きちんとCxを実施すれば施工者との間に信頼感も生まれてくる。そこで他よりも高いフィーがもらえる可能性もある。Cxに携わることによって、結果的に工事会社として高い利益を得てもらうという循環が良いと思う。

[吉田] Cxを施工側でもできるかという話とCxを施工者側でも実施するという話が混在しているように感じる。検証とCxは違う。Cxは、まず調査をし、その調査結果からOPRを作成し、それをどのように実現し、滞りなく満たすようにするかという流れ(プロセス)を言っている。ゼネコンであれ、サブコンであれ、設計チームであれ、そのプロセスを組み込むという事が大切である。それでこそオーナーが求める性能が達成される。そこをきちんと文書化をする必要がある。

[松下] 某プロジェクトでは、設計者の下で自動制御に特化したCx(インハウス)を行っている。通常の設備設計では、自動制御に関しては自動制御メーカが設計を支援する。ここでは、Cxプロバイダ(=私)は自動制御設計のCMT(自動制御設計CMT)としてふるまう。自動制御CMTは、設備設計者の意図を理解し、問題があれば設計者に助言する。また、設計意図を具現化するためにどのような制御ロジックが必要か、調整可能な制御パラメータをどうするかなど、設備設計チームの中でCx会議を実施し、自動制御メーカの支援をうけながら設計図を作成する。ここでは、設備設計者は、通常のCxの発注者(オーナー)とみなし、自動制御CMTが私である。設計者(=オーナー)・CMTの考え・要求に対して自動制御の設計図を作成するのが、通常の設計フェーズのCxの設計者の役割である。自動制御メーカもただ言われたとおりに自動制御の設計をするのではなく、彼らが持つ経験・ノウハウを基にCx会議で積極的に意見を出すようにCMTが促す。このプロセスは、まさにCxである。このような設計業務の中で行う自動制御に特化したCxは、設計者が自身の設計業務の中で手薄な部分に対して、設計を発注する建物オーナーから発注された設計業務フィーから捻出される。このような自動制御Cx2件行っており、新たなニーズとして確実にあると気付いた。今後、設計者が内部でのCxを行うことが有効と考えれば、この分を予め設計フィーとして上乗せすればよいと思う。

[大石] 特別な業務として委託するのは、特殊なシミュレーション等を実施するために、通常の設計とは違うプロセスを踏むので費用もらうというのと同じようなイメージだろうか?

[松下] そのイメージとは違う。設計者が自信の設計図のレベルを上げるためなので特別なフィーではない。設計者としては設計をするために必要な経費だとして全体に含める、ということである。

[] よく理解する為に再度聞くが、設計事務所が自動制御設備等を設計外注するときの設計内容が高度になってきているので、設計者の理解が及ばないことがある(語弊はあるが)そういう部分をCxで補うというイメージだろうか。

[松下] 一般に設計者は、自動制御のロジックの詳細の知識やパラメータ調整の知識が十分でない人が多い。この部分に、専門のCxプロバイダを入れて、設計者と実際に作図する自動制御メーカとで意見交換し、最終的に設計者が合意して設計図として反映することになる。Cxで補うというより、設備設計の一部である、自動制御設備の部分にCxプロセスを適用するということである。

[] 設計者として意図したことを具体的な文書として起こすというのは、労力的にも大変であるし、それを自動制御メーカがわかる言葉に翻訳してもらいたいというイメージだろうか?

[松下] 翻訳というのは不十分な表現である。設計者の考えに対して課題があればそれを示し、解決のための方策を探ることもある。まずは設計者の考えをCMTが整理した上で、実際に設計図作成支援を行う自動制御メーカに対して具体的な制御ロジックの内容、持たせるべき制御パラメータの項目、パラメータ調整の手法なども含めて設計図に盛り込む。私が行っている2物件は、設計図面の付属書として自動制御仕様書という形で、制御目的や制御ロジックの詳細などをまとめた文書を作成している。これがあれば、自動制御をどこが受注しても正しく意図が伝わると考えている。

[] 具体化するためにはもう少しブレイクダウンした話をしなくてはいけない。そこをCxオーソリティとして設計者と自動制御会社の間に入って行うというイメージだろうか?

[松下] そう考えてよい。通常、建物オーナーが直接発注するCxで実施しているように、CMTがオーナーに助言するように、設計者に助言する。設計者の考えを実際の制御に落とし込む作業を自動制御メーカと行う形である。

[小林] 現在、某プロジェクトの熱供給設備の設計で松下氏にCxをお願いし、基本設計、実施設計を通じて発注者との設計会議に出席していただき、レビューをしてもらっている。特に今回のプロジェクトでは試運転期間が十分に取れない可能性も考えられるため、施設運用開始時からきっちり運転できるように施工会社に発注する図面に、どのような形で試運転調整時の測定、検証を行うかを設計図面に盛り込んでおくことも必要と感じている。これも松下氏にCx業務を発注した理由である。発注者との打ち合わせの中で、設計者としての意図は説明するが、第3者の立場として設計会議の中で発注者にこの制御ならこれで問題がない等、意見を言って頂いていることで、発注者の納得を得られている。

[吉田] 確認するというプロセスをCxでは導入していくことの大事さがなかなか理解されていない。第三者により確認作業が自分のビジネスを抵触しているように思われてしまうが、そうではない。ゼネコンでもサブコンでも社内でCxを実施していると言ってもらったら良いと思うが、そうは思ってもらえていない。その価値を理解しないでCxは敵のような形で扱われているのは非常に残念である。

[天野] 施主からすると、設計会社に依頼すると省エネに関するパフォーマンスが100%達成できると思われているので、そこにCxがいかに大事かということを伝えなければならない。設計と施工の過程で、ひょっとすると無駄があったり、もう少し良いことができたかもしれないということもあるように思う。施主には、そういうプロセス(Cx)を踏むと、そういう齟齬が無くなると説明はするが、中々わかってもらえない。

[松下] Cxを実施する際に大事なことは、過去にできているものを絶対に批判しないことである。判断や実行をしたその時にはその時の考えがある。

Cxを導入すると批判的なことをいう人がいるので、「Cx的なもの、省エネ的なものを言い散らかして帰る」という印象があって嫌な思いをするということが多々ある。Cxに一番大切なのは、調和である。

前例の場合、設計について良く理解をした上で発言はするが、費用をもらっているのは設計事務所からなので私にとってのオーナーは設計事務所である。そのため、設計者が目的を達成するために設計のCxすることが重要だと考えている。設計がよくなれば、結果として本来のオーナーのメリットにもなる。

[天野] 現状でも良い(グッド)より良いやり方(ベター)があるかもしれない。という提案はしないといけないと思っている。

[] オーナーの中にもインハウスのエンジニア(ある程度技術論がわかる者)を抱えるオーナーとそうではないオーナーとがいるが、どういう比率なのだろうか。今まで松下氏が仕事をされてきた相手は比較的技術論が理解できる方がいて、お互いに通じる専門用語で話せる場合が多いのか。その場合、Cxの必要性を理解頂ける方は多いのか。

[松下] ほとんどは専門用語がわからない人が多いので、丁寧に説明している。別の細分化したWGを作りオーナーだけ集めてなぜこうするべきなのか等の説明会をする。細部までわかる人はいないが、問題点に気づいてもらうことが大切である。わかる人の方が少ないが、会議には必ず出てもらうことにしている。ある一つの行為をするのにこれだけ苦労して判断しないと危ない、という点を掴んでもらうだけで良いと思う。会議にオーナーが出席せず、お任せのような形になると、その場で方針が決められず、作業がスムーズに進んでいかない。Cxはお任せではダメで、オーナー自身が中心にいるという意識で取り組んでもらわなければならない。こういう事は、実際にCx会議に参加し、プロセスを経験しないとCxとは何かをオーナーが理解することは難しい。

[吉田] 検証して適切な性能のものを渡す(設計をする)ことは、設計者、施工者が満たすべき当たり前の役割であると思っているオーナーがほとんどである。Cxを導入し、今までの設計や施工とは違う進め方をすることで、発注者が求める性能がだせるようになるということの大事さを判ってもらいたいが、これは体験しないと判らない。

一度体験してもらうためには、まずCxを始めないといけないので、鶏と卵みたいな関係になる。あるCxを導入した某物件でも発注者の担当者は技術者であったがあるレベルを超えると我々には判らないとなってしまった。しかし会議に同席することによって、なぜ一生懸命議論しているかの大事さが理解してもらえた。こういうレベルになればCxの大事さが分かるようになり成功する方向に向く。

[小林] 某プロジェクトの熱供給設備の設計Cxを松下氏に依頼できたのは、設計発注仕様書の中に「照査業務」という要綱があったので、その業務の一部分として依頼することができた。

[吉田] Cxを体験してもらわないとわからないという点ではそういう要綱が発注者の仕様書にあったので、組織の中でCx業務の発注が説得できたというのは良いことだ。国交省の告示では、Cxを実施することが必要であると書かれている。この告示に気が付く人がいて、書いてあるのでCxを導入することにする、となると良い。どのようにすればCxを導入する必要性が判ってもらえるようにできるかについては、今後、視点を変えて違うテーマで考えてみたい。

活動実績 活動予定 他

 

◆協会活動実績 (2022/2)

2022216日(水) 2021年度第5回 企画運営委員会 WEB開催

2022224日(木) 2021年度BSCAシンポジウムin東京

◆協会活動予定 (2022/32022/4)

2022330日(水) 2021年度資格判定委員会

2022412日(火) 2022年度第1回 企画運営委員会

 

◆編集者より

    年末から広がっていたコロナウイルス第6波がようやく下降局面に入ったよう思います。先日、3回目のワクチン接種を済ませましたが、今回も副反応に見舞われました。半年後には収束して、4回目を打たずに済む様になることを、切に願います。

 

◆編集長より

    先月号よりCxPE座談会(東京、大阪その1、大阪その2)の様子を記事として掲載しています。Cxに関わる人の本音が聞ける面白い記事になっているように思います。来年度もCxPE座談会を開催できればと思っています。その頃にはコロナが収束していて欲しいですね。

 

   ◆企画制作

編集者:三浦(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)

編集長:大石(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)

 WEB版作成:小澤(建築設備コミッショニング協会 事務局)

 

 

※本誌に掲載した著作物の著作権は、特定非営利活動法人建築設備コミッショニング協会が所有します。許可無く複写転用することをお断りいたします。

お問合せメール:bsca_mail@bsca.or.jp(アットマークを半角に)

 

 

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