活動

新築ビルのコミッショニング事例

各事例の実施担当欄にある「CMT」とは、性能検証管理チーム(Commissioning Management Team)を言う。

京都駅ビル熱源・空調改修工事コミッショニングプロジェクト(新築コミッショニング)

コミッショニングで100年建築を実現する ~改修対象のCO2削減量60%を達成~

発注者の声

ファーストペンギンのつぶやき

実施期間

2010年4月~2011年3月、2014年4月~2017年6月

  • 2010年 調査・企画フェーズ
  • 2011年~2014年 基本設計フェーズ・実施設計フェーズ
  • 2015年1~2016年 施工フェーズ
  • 2016年7~2018年 機能性能確認・適性化フェーズ

実施担当

【発注者】 京都駅ビル開発 髙浦敬之、佐野邦治
【CMT】 吉田治典(CA,CxPE)、柳原隆司(CxPE)、赤司泰義、下田吉之、杉浦修史、松下直幹(CxTE)、山本雄二(CxTE)、岡 敦郎(CxPE)、矢部克明、武村純市(京都市)
【設計者】 日建設計・日建設計総合研究所 高野恭輔、牛尾智秋、福島正成、高橋直樹(CxPE)
【施工者】 高砂熱学・テクシア共同企業体 森茂美、山口淳志(CxTE)、安井亮人、西日本電気システム
【運転管理者】ジェイアール西日本総合ビルサービス
   

施設データ

京都駅ビルは、平安建都1200年の記念事業の一環として四代目駅舎として1997年に建設された複合用途ビルで、駅舎の他、百貨店、ホテル、劇場、専門店が一体となった、延床面積235,942m²、地上16階・地下3階、高さ60m、東西470mのビルである。

コミッショニング対象設備の概要

本プロジェクトは、改修検討開始時に竣工以来15年経過していた熱源・空調・急騰設備の大規模改修である。既存システムの冷熱源はコージェネレーションの排熱蒸気を 活用した蒸気九州冷凍機と氷蓄熱、温熱源は蒸気ボイラーのシステムであったが、既存システム の調査・分析と基本・実施設計フェーズのコミッショニングを踏まえ、以下のようなシステムへの改修により、対象設備において60%(建物全体では30%)の省CO2を目指した。

  • 熱損失対策のため蒸気から温水搬送システムへの転換
  • 高効率なインバータターボ冷凍機と空気熱源ヒートポンプチラーの採用
  • 未利用・再生可能エネルギーの活用のため井水利用のヒートポンプ熱源、太陽熱利用の給湯システムの採用
  • ガスエンジンコジェネレーションによるデマンドレスポンスへの対応と吸収式冷凍機による排熱利用
  • 空調機外気

コミッショニングの概要

Cxプロセス

    発注者,設計者,施工者,運転管理者とCx管理チーム(CMT)が協働してOPRに沿った性能を達成した CMTはCxプロセスの管理・統括を行う組織であって「主」という立場ではなく、OPRの整理,設計図・施工図のレビュー、機能性能試験,適正化・最適化などを文書によって管理し、OPRに沿う性能の達成を目指した。

調査フェーズ(2010年)

存設備のBEMSデータを用いて性能を定量的に調査・分析して改修設計のための課題を抽出しOPR作成した。

設計フェーズ(2011~14年)

    基本設計は2011年に完了したが、東日本大震災(3.11)のためにエネルギーの需要供給状況の変革が起き、その動向も勘案して実施設計を2014年に終えた。 CMTは第三者として設計図書をレビューした。また、施工者や運転・管理者に設計意図を明確に伝えるために設計者には設計主旨の文書化を求め、CMTは機能性能試験実施のための特記仕様書(Cx)を作成して設計図書に添付し、施工者に試験の内容 を具体的に示した。 基本設計の原案は予算上実施が困難であったため、空調機のコイルを冷・温のダブルコイルにせず冷温水コイルとしたり、脱蒸気を2次側改修時の先送り工事とするなど約40億円に及ぶ減額案をCMTが中心になって提案し実施設計を開始した。

施工フェーズ(2015~16年)

    性能が担保された施工となっているか機器性能が適切であるかについて、また施工中に発生したVE提案に対して、OPRを保持しており性能低下がないかについて精査した。 CMTは原設計の主冷熱源であるインバータ可変速ターボ冷凍機と熱回収ヒートポンプのVE提案に対して最適運転の必要性を指摘 するとともにその制御方法を提案し、これが実装された。その結果、年間を通して高いCOPの運転が達成された。 施工者からクラウド化したBEMSデータシステムの構築が提案され、約15,000点のデータの効率的な処理が可能となり、性能分析から適正化にいたるPDCAサイクルが効率的に回せた。

機能性確認・適正化フェーズ(2016~18年)

    竣工後,機能性能試験と適正化を3年間実施した。またCxの経緯を文書化してビル管理者に伝達し,省エネ性能が継続できるようにした。 竣工後1年目の試験の結果,給湯用の高温水ボイラ熱源の効率が低いことが判明したが、分析の結果、原因はボイラの燃焼On-Off時に生じる過大なパージ損失であることがわかった。そこでデータを分析しながらステップバイステップで適正化を図 った結果、効率が改善した。 コージェネレーションシステムの機能性能試験では、発電効率、蒸気排熱を利用する蒸気吸収冷凍機の効率、温水排熱の利用率などを検証した。その結果、排熱蒸気の圧力が低く吸収冷凍機の能力がでていないことが判明したのでこれを改善した。 旧システムの開放式冷却塔は様々な不具合により充填材にスケールが堆積し性能が劣化していた。そこで同種の問題が生じないように、薬注量の適正化による水質管理、冷却塔内部構造の改良による散水状況の適正化、冷却水ブロー方式の見直しと改良、ファンベルトの新たな管理方法、冷凍機凝縮器の伝熱性能劣化予測方法の開発など、種々の検討・改良を行った。その結果、補給水・薬剤コストが38.5%削減できた。

継続Cx(2019年~)

    機能性能確認・適正化フェーズ終了後も熱源システムの総合エネルギー効率は毎月オーナーの運転管理者にレポートされている。 竣工直後2016年の56.4%から2021年の66.2%へと削減率は大きく増加しているが、最近2年間の削減増はコロナ禍の影響を受けている。 熱源システムの総合エネルギー効率をウオッチするという簡易な運用フェーズCxにより、大きな遅延なく課題抽出と適切な対策が継続されている。

受賞

  • 第3回「京(みやこ)環境配慮建築物」優秀賞、 2017
  • 省エネ⼤賞(省エネ事例部⾨⽀援・サービス分野)経済産業⼤⾂賞、2019
  • 空気調和・衛⽣⼯学会 特別賞 リニューアル、 2019
  • 建築設備技術者協会カーボンニュートラル⼤賞、2019
  • ASHRAE Technology Award First Place、2021

成果発表(抜粋)

  • 吉田治典他:空調システムエネルギー計算シミュレーションソフト(ACSES/Cx)のコミッショニングへの応用(第1~7報),空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集、2012~2013
  • Yoshida,et.al.,"Application of the air-conditioning system energy simulation for commissioning (ACSES/Cx) tool to HVAC simulation commissioning Part 1,Part 2", Proceedings of BS2013,13th Conference of International Building Performance Simulation Association, 2013
  • 松下直幹他:大規模複合用途建物の熱源・空調設備改修プロジェクトのコミッショニング 第2報 熱回収ヒートポンプ熱源の適運転制御と制御プログラムの実装法,,空気調 和・衛生工学会学術講演論文集、2016
  • 矢野真也他:大規模複合用途建物の熱源・空調設備改修プロジェクトのコミッショニング 第9報: 搬送システムの機能性能試験・適正化,,空気調和・衛生工学会学術講演 論文集、 2017
  • 吉田治典他:大規模複合用途建物の熱源・空調設備改修プロジェクトのコミッショニング 第13報: 冷熱源システムの最適運転法の手法と実装システムの開発,空気調和・衛 生工学会学術講演論文集、2018
  • 特許: ターボ冷凍機の制御方法及びそれを用いた熱回収熱源システム,特許発明者 吉田治典,松下直幹,特許第6964041号、2021

コミッショニング概要の参考事例1

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新長崎県庁舎の新築ビルコミッショニング

官公庁舎初の新築ビルコミッショニングの適用事例
年間一次エネルギー消費量40%削減を目指す

発注者の声

新長崎県庁舎のコミッショニングの有用性について

実施期間

2012年7月~2014年3月

実施担当

【発注者】 長崎県総務部県庁舎建設課
【CMT】 赤司泰義、住吉大輔、葛隆生
【設計者】日建・松林・池田特定建設関連業務委託共同企業体 白土弘貴(CxPE)

施設データ

新長崎県庁舎は2014年に着工し、2017年の竣工を予定している。コミッショニングの対象は行政棟(地上8階、延床面積46,718㎡)と議会棟(地上5階、延床面積6,699㎡)とした。

コミッショニング対象設備の概要

コミッショニングの主たる対象は熱源および空調であり、熱源はターボ冷凍機、空冷ヒートポンプチラー、吸収式冷温水機、水蓄熱槽を組み合わせた電気・ガス併用方式とし、空調は外調機で潜熱処理を行い、空調機やファンコイルで顕熱処理を行う、潜熱顕熱分離空調方式を採用する。

コミッショニングの概要

官公庁舎に要求されるコスト縮減や環境負荷低減の実現のため、設計フェーズにおけるコミッショニングを実施した。複数の熱源構成案より最適な熱源システムを決定し、ESUMによる最大熱負荷計算結果から、詳細な熱源容量を決定した。LCEMによるシステムシミュレーションの結果、標準的な官公庁舎と比較して、運用段階の年間一次エネルギー消費量を40%以上削減できる見込みがあることを確認した。その他、室環境や自然換気効果の検証のためのシミュレーションや、竣工後の機能性能試験の実施に向けた仕様書を作成した。

成果発表

  • BSCA 2015年 公開シンポジウム CxF登録制度の創設とCxビジネスの展開
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NTTファシリティーズ新大橋ビルの新築ビルコミッショニング

自然エネルギーを徹底的に利用しエネルギー削減40%を達成するとともに、知的生産性を高める研究・実験空間を実現

実施期間

インハウスコミッショニング:2012年10月~
建築設備コミッショニング協会によるコミッショニング
2014年8月~2015年3月6日

実施担当

【発注者】NTTファシリティーズ
【CMT】 吉田新一(CA・CxPE)、山羽基(CxTE)
【設計者】NTTファシリティーズ

施設データ

建物概要
用 途:事務所
構 造:地上 S造、地下RC造
規 模:地上4階、地下1階
延床面積:4,341.59m²
竣 工:2014年4月

コミッショニング対象設備の概要

空調設備
 熱源設備:地中熱利用+空冷ヒートポンプチラー+空冷ヒートポンプパッケージ併用
二次側設備
 オフィス部分:膜放射空調ファンコイルユニット、デシカント外気処理ユニット、マルチパッケージ
 サーバー室:空冷ヒートポンプパッケージ、冷媒自然循環、排熱回収システム
衛生設備:雨水再利用
電気設備:LED照明

コミッショニングの概要

OPR: 研究・開発イノベーション拠点として

  • 1.環境・エネルギー分野の技術開発の加速
  • 2.知的生産性を高める研究・実験空間
  • 3.施設全体をショールーム化する
  • 4.自然エネルギーの徹底活用
  • 5.変化し続ける研究を支える柔軟な建築

を実現するために、企画計画段階から、設計、施工、引き渡し後段階までのコミッショニングを実施した。

成果発表

以下、NTTファシリティーズ発表の報文

建築学会大会学術講演会(北海道)2013年8月
 福光ら:サーバー室を持つ事務所ビルのライフサイクルエネルギーマネジメントに関する研究(その1)~同(その5)
空気調和・衛生工学会大会論文
 サーバ室を持つ事務所ビルのライフサイクルエネルギーマネジメントに関する研究(平成25年発表)
 同上 その2 実測値に基づく性能検証の経過報告(平成27年発表予定)
 同上 その3 全空気式放射空調の快適性能検討(平成27年発表予定)
 同上 その4 建物内情報連携と位置検知による建物運用最適化の評価(平成27年発表予定)

「雑誌」

  • BE建築設備 -NTTファシリティーズ新大橋ビル- 平成26年9月号掲載
  • 新建築 -NTTファシリティーズ新大橋ビル- 平成26年9月号掲載
  • 近代建築 -NTTファシリティーズ新大橋ビル- 平成26年9月号掲載
  • 設備と管理 -実証実験型オフィス NTTファシリティーズ新大橋ビル- 平成26年10月号掲載
  • 建築設備士 -NTTファシリティーズ新大橋ビル- 2015年2月号掲載
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名古屋大学(東山)総合研究棟(地域環境系)の新築ビルコミッショニング

大学施設における建築・設備のトータルビルコミッショニングを実施 CO2排出量を20%以上削減

実施期間

2011年5月~2014年3月

実施担当

【発注者】名古屋大学
【CMT】中原信生(CA,CxPE)、奥宮正哉、湯沢秀樹(CxPE)、吉田新一(CxPE)
インハウスチーム:谷口元(施設計画推進室)、施設管理部、環境学専攻・奥宮研究室
【設計者】森村設計(設備)、日建設計(建築・・断熱・換気・アースチューブなど)
【施工者】日比谷総合設備(設備)、鴻池組(建築・・同上)

施設データ

本施設は名古屋大学東山キャンパス内旧核研跡地再開発計画の第Ⅰ期として新築された、地上8階建、延面積7,000m²建物である。

コミッショニング対象設備の概要

建築的にはアースチューブ・エコシャフトを採用、熱源システムは井水利用ヒートポンプチラー+水蓄熱システム、空調システムは井水熱源利用の水熱源パッケージと大温度差FCUを採用し、建物全体で省エネルギー技術を導入している。建物全体として年間一次エネルギー消費量を、学内の同用途の基準建物の年間一次エネルギー消費原単位より20%以上低減、年間一次エネルギー消費量目標値1.86GJ/m2・年を目標としている。

コミッショニングの概要

建築的省エネ手法として採用したアースチューブの冷却・加熱効果とエコシャフトでの温度上昇について設計時にシミュレーションで確認、熱源システムについては、LCEMとHVACSIM+を利用して基本・実施設計時にOPRの目標値を評価、施工時における機器選定に用いて、実際に建物が運用されるときのエネルギー消費量などの目標値もしくは目安の設定を実施した。機能性能試験では、自動制御管理文書をもとに運転モードごとの熱源機性能、蓄熱バランスと蓄放熱プロフィールや夜間移行率など熱源システムの運転性能と、二次側送水制御性能について確認した。機能性能試験の結果を踏まえて最適運転に向けたパラメータの調整も併せて実施した。

成果発表

  • 中原信生,奥宮正哉,谷口元,太幡英亮ほか:大学施設のトータルビルコミッショニングの実践研究(第一報)~(第七報),空気調和・衛生工学会大会論文, 2012,2013
  • 奥宮正哉:インハウスエンジニアとのコラボレ-ションによる設計段階のCx適用事例について,空気調和・衛生工学会大会ワークショップ(2)/コミッショニングの実用展開に向けて, 2012
  • 藤井良一,奥宮正哉,上谷勝洋,大学施設へのコミッショニングの適用「名古屋大学でのコミッショニングの導入の経緯と期待」「名古屋大学におけるトータルビルコミッショニング」「コミッショニングのメリット:機能性能試験の実例」,建築設備コミッショニング協会(BSCA)10 周年記念シンポジウムin中部,2013

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日赤医療センター 新築ビルコミッショニング

大規模病院施設の新築ビルコミッショニングの適用例

実施期間

2005年11月~2007年4月

実施担当

【発注者】日赤
【CMT】中原信生(CA,CxPE)、宮井信雄、笠置徹(CxPE)、湯澤秀樹(CxPE)
【設計者】久米設計
(参考【施工者】大林組・高砂熱学ほか)

施設データ

大規模な病院施設に企画・設計・発注フェーズの新築ビルコミッショニングを適用した。
構  造:鉄骨造 
規  模:地上12階 地下4階
延床面積:80,906m²

コミッショニング対象設備の概要

日本赤十字社広尾地区再建整備計画における新医療センター新築工事の設計フェーズにおけるコミッショニングを実施した。エネルギ・熱源システムの最適選択をシミュレーションにて検討し、候補システムを提示した。

コミッショニングの概要

病院の熱源システムの企画・設計フェーズにシミュレーションプログラムTES_ECO、FACESを用い最適システム選定を行った。

  • 未利用エネルギー利用の効果
  • 熱回収方式
  • 空気熱源ヒートポンプ採用の効果
  • 電機機種/ガス機種設置容量比
  • 運転の優先順位

を検討した。

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アズビル環境技術センター 新築ビルコミッショニング

我が国初の新築ビルコミッショニングの適用例

実施期間

2000年5月~2001年9月

実施担当

【発注者】山武(当時)
【CMT】中原信生(CA,CxPE)、湯澤秀樹(CxPE)、笠置徹(CxPE)、小野島一(CxPE)
【設計者】日建設計(建築・設備)
【施工者】大林組(建築・設備)

施設データ

蓄熱槽を有する研究施設に我が国初の空気調和設備の新築ビルコミッショニングを実施した。
構  造:鉄骨造 
規  模:地上4階
建築面積:702.67m²
延床面積:695.75m²

コミッショニング対象設備の概要

熱源:空冷ヒートポンプチラー+水蓄熱システム
空調:1F 床置きパッケージ 
2F タスク&アンビエント空調
3F VAV空調方式  
4F 躯体蓄熱放射冷暖房システム+自然換気システム

コミッショニングの概要

国内で初めての新築ビルコミッショニングであったので、性能検証指針のプロセスの適用手法、文書の整備を行い、これらはその後のコミッショニングの実施に大きく貢献した。蓄熱槽を含むシステムにおいて機能性能試験計画の立案・実施を行い、操作性の向上、継続的な検証への展開を実現した。

成果発表

  • 中原信生他、空気調和設備の当初性能検証(新築ビルコミッショニング)の実践究 第 1 報~第8報 、空気調和・衛生工学会大会論文集、2001
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