活動

既存ビルのコミッショニング事例

各事例の実施担当欄にある「CMT」とは、性能検証管理チーム(Commissioning Management Team)を言う。

沖縄の高温多湿な気候条件下における研究施設に特有な機器・システムを対象とした既存コミッショニング

沖縄科学技術大学院大学(OIST) 既存Cxプロジェクト

実施期間

  1. BSCA受託期間
    • 企画フェーズ:2015年3月
    • 調査フェーズ:2016年9月~2017年3月
  2. (株)コミッショニング企画受託業務
    • 対策実施フェーズ:2018年11月~2019年3月

実施担当

  • 1) 企画フェーズ及び調査フェーズ
    • 【発注者】沖縄科学技術大学院大学(OIST)
    • 【CMT】 建築設備コミッショニング協会
      吉田治典(CA・CxPE)、松下直幹(幹事・CxPE)、柳原隆司(CxPE)、岡 敦郎(CxPE)、西山満(CxPE)
    • 【運転・管理者】沖縄ビル・メンテナンス
  • 2)対策実施フェーズ
    • 【発注者】沖縄科学技術大学院大学(OIST)
    • 【CMT】 株式会社コミッショニング企画
    • 松下直幹(CA・CxPE)
    • 【運転・管理者】沖縄ビル・メンテナンス
    • 【自動制御】アズビル

施設データ

2011年開学、延床面積52,000㎡
センター棟 (2010年竣工)、研究棟 1~3棟(それぞれ2010年、2012年、2015年竣工)
【設立目的】 国際的に卓越した科学技術に関する教育・研究を実施し、沖縄の自立的発展と、世界の科学技術の向上に寄与すること
【教育・研究概要】5年一貫制の博士課程を置く大学院大学、教員と学生の半数ほどを外とし、教育・研究は全て英語主な研究分野は、生物、物理、化学、数学・計算科学など。学際的な研究を目指す

コミッショニングの概要(企画フェーズ、調査フェーズのCx(BSCAが受託))

コミッショニングの概要

  • 既存熱源・空調設備システムの改善検討を目的として、以下の業務を実施
    • 1) BEMSデータ分析・運転者へのヒアリングを実施し、分析報告書を作成
    • 2)を基に問題点とその改善策・対策実施の費用対効果をまとめた不具合・改善策一覧表を作成
    • 3) プロジェクト全体の成果をまとめたCx報告書を提出し、これを増築する新研究棟の設計・施工に対するセカンドオピニオンとして活用

主な調査項目・データ分析の視点

熱源・空調の熱負荷・エネルギー消費実態の把握
・気温の高い沖縄ではあるが、研究室の温度・湿度維持のため、除湿後の再熱のための温熱負荷が非常に多い

省エネテーマの設定と省エネ量の試算

  • 1)氷蓄熱システムの運用改善
    【対策】11-4月に中間期・冬期の氷蓄熱システム運用停止する
  • 2)蒸気ボイラの運転効率の改善
    【対策】制御チューニング(台数制御パラメータ、圧力設定の適正化
  • 3)空調機・除湿再熱負荷軽減検討
    【対策】異なる室内条件の研究室の個別化し、外調機の給気温度・湿度設定値の緩和
  • )各研究室のヒュームフードの利用状況の確認・運用改善検討
    【対策】不使用時はフードを閉める運用の徹底

不具合・改善策一覧表

不具合・改善策一覧表を作成、各対策の省エネ量を試算、Cx報告書の提出

コミッショニングの概要(対策実施フェーズのCx(株式会社コミッショニング企画が受託))

コミッショニングの概要

  • 既存熱源・空調設備システムの改善検討を目的として、以下の業務を実施
  • 除湿・再加熱の課題に関して、今後の新規ラボ棟の空調システム設計コンセプトの提案
  • 対策実施内容と削減効果
    • 1)温熱源システム(BSCAの調査フェーズ報告書に記載の対策)
      【対策】温水送水温度48-50℃運用、台数制御モード変更
      【削減効果】1次エネルギー:315 GJ/年減(4.7%減)、コスト:約130万円減/年
    • 2)冷熱源システム(BSCAの調査フェーズ報告書に記載の対策)
      【対策】外気温度17℃以下の期間に冷水温度設定を8℃、増段判断流量を170m3/hに上げる
      【削減効果】 1次エネルギー:105 GJ/年減、コスト: 約19万円減/年
    • 3)LAB2・空調機システム(Cx企画が提案した対策)
      【対策】
      (1)給排気静圧SP値を昼間50Pa減、夜間120Pa減
      (2)空調機1台あたり3台構成のファン(全台インバータ)の運転台数を夜間は1台から2台、昼間は2台から3台に増やして運転し、ファンの回転数を下げて効率化を図る。
      【削減効果】 1次エネルギー:4338GJ/年減(445千kWh減)、コスト:約800万円減/年

成果発表

  • 西勇樹、松下直幹他:研究施設建物の既存建物コミッショニング事例研究(第1報)データ処理業務の実施概要とその合理化検討,空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集,2017.9.
  • 2017年空気調和・衛生工学会100周年記念事業シンポジウム(東京)“ビジネスとしてのコミッショニング普及に向けて~オーナーが語るCxの有用性と課題~”,コミッショニング委員会,配布資料,2017.10
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ヨンデンビル新館のコミッショニングを活用した継続的な省エネルギー・負荷平準化への取り組み

季節間土壌蓄熱空調システム等を採用した事務所ビル~第15回空気調和・衛生工学会 特別賞「十年賞」受賞~

実施期間

2004年3月~2014年4月

実施担当

【発注者】 四電技術コンサルタント
【CMT】 吉田治典(CxPE)、赤司泰義、住吉大輔、葛隆生、金政秀、宮田征門、安岡稔弘(CxPE)、天野雄一朗(CxTE) 、小林陽一

施設データ

ヨンデンビル新館は、四国電力株式会社の新本社ビルとして「自然エネルギーの利用」、「負荷の抑制」、「負荷の平準化」、「資源の有効利用と環境負荷の低減」を4つの基本コンセプトに「環境共生型の省エネオフィスビル」を目指し、2004年3月に竣工した。

コミッショニング対象設備の概要

ヨンデンビル新館では、電力負荷平準化および省エネルギー・環境負荷軽減を実現するため様々な施策を実践している。蓄熱技術として「土壌蓄熱空調システム」、「水蓄熱空調システム」、「躯体蓄熱空調システム」を採用し、季節によって複合的な運用を実施している。また、本建物に新技術として採用した土壌蓄熱空調システムは、全国にも実用例の稀少なシステムであり、外気が低温となる冬期の夜間に密閉式冷却塔で循環水を冷却し、建物の杭内部に設置した配管を通じて循環することにより土壌に蓄冷し、夏期に冷熱として利用するものである。

コミッショニングの概要

本建物は、設計時に計画された最新の建築設備の要求性能を実現するために竣工後10 年間にわたり、関係者(建物利用者、建物所有者・維持管理者、設計者)により段階的にコミッショニング体制(CMT)を構築し、実測データを基にしたシミュレーション解析による省エネルギー評価を継続的に実施することで、運用方法の最適化等に取り組んだ。
コミッショニングフェーズとしては、土壌蓄熱空調システムやその他設備の設計時から竣工後4年目までの新築ビルおよび運用時の最適化コミッショニングと、5年目から10年目までの定常的な運用段階に入ってからの水蓄熱・2 次側空調システムを含んだ継続的な既存ビルコミッショニングという、大きく2段階に分けて実施した。
このように、竣工後10年にわたり継続的にコミッショニングを実施した結果、2013年度には1次エネルギー消費量934[MJ/㎡・年]を達成し、性能を維持・改善しながら消費エネルギー量を竣工年度に比べ約40%削減した。また、新技術として採用した「土壌蓄熱空調システム」はシミュレーションによる運用の最適化を実施し、高効率な運転方法を見出し、それを継続することによりシステム効率10.1を達成した。

成果発表

  • 1)土壌蓄熱を有する空調システムの性能分析(空気調和・衛生工学会近畿支部)
  • 2)杭基礎を利用した自然エネルギーによる土壌蓄熱空調システムの分析(空気調和・衛生工学会大会)(日本建築学会大会)
  • 3)蓄熱空調システムを採用した建物における空調エネルギーの最適化に関する基礎的研究(日本建築学会四国支部)
  • 4)蓄熱方式を複合した空調システムの効率的運用に関する研究(空気調和・衛生工学会大会)
  • 5)複合蓄熱方式を導入した空調システムの効率的な運用に関する研究(日本建築学会大会)
  • 6)杭基礎を利用した自然エネルギーによる土壌蓄熱空調システムの運転改善手法の検討(日本建築学会大会)
  • 7)杭基礎を利用した自然エネルギーによる土壌蓄熱空調システムの運転実績(日本建築学会四国支部)
  • 8)自然エネルギーによる土壌蓄熱空調システムの開発と運転実績(日本ヒートアイランド学会)
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中之島六丁目西地区地域冷暖房施設の既存システムコミッショニング

独自開発したシミュレーションツールを援用して運転改善方法を提案
年間300万円のエネルギーコスト削減を実現

実施期間

2005年7月~2009年3月

実施担当

【発注者】関西電力
【CMT】吉田治典(CA,CxPE)、辻裕伸、中根功博(CxTE)、京大・吉田研究室

施設データ

本施設は1992年に竣工した大阪中之島にある地域冷暖房設備である。現在、延床面積112,000m²(3棟合計)に対して冷温水を供給している。

コミッショニングの概要

全電気システムの熱源システムであり、冷凍機、空気熱源ヒートポンプ、氷蓄熱槽、水蓄熱槽の組み合わせで最大供給冷熱量は41GJ/h、最大供給温熱量は28GJ/hである。供給先が2006年に増えたため高効率熱源機器の増設がなされ、それを機に最適運転を目指してコミッショニングを実施した。

コミッショニングの概要

独自に開発したシミュレーションツールACSES/Cxを用いて熱源システムのモデルを構築し、それを援用して様々な運転方法をシミュレートし最適運転法を模索した。検討結果から、蓄熱槽の運転方法の改善、蓄熱制御方法の改善、冷凍機サブシステムの最適化など、約10項目の改善提案を見出し、実運転ではこれらが順次実施された。結果として一次エネルギー換算COPは1.08となり約20%改善した。この値は我国の平均的な地域冷暖房システムに比して70%ほど効率がよい。またコミッショニングによる概算削減コストは年間300万円であり、コミッショニングへの直接投資は約2年で回収できた。こうした改善努力により、本事業は2011年ヒートポンプ・蓄熱センターの蓄熱システム運転管理等の改善事例「優秀賞」を受賞した。

成果発表

・新宮浩丈,中島里恵,吉田治典,王福林:既設地域冷暖房熱源システムの最適運転手法の提案-複コミッショニングへの応用-,日本建築学会大会学術講演梗概集,D2,pp.1245-1246,2006

・新宮浩丈,吉田治典,王福林,小野永吉,辻裕伸,綾部文博,中根功博: 地域冷暖房熱源システムの復コミッショニングと最適運転に関する研究,(その3)冷凍機冷却水温度設定値の最適化及び実験検証,空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会論文集,pp.53-56, 2007

・E. Ono, H. Yoshida, F. Wang, H. Shingu : Study on Optimizing the Operation of Heat Source Equipments in an actual Heating/Cooling Plant Using Simulation, Building Simulation 2007, pp.580-587, 2007

・Hirotake Shingu, Harunori Yoshida, Fulin Wang, Eikichi ONO: Preliminary Retro-Commissioning Study on Optimal Operation for the Heat Source System of a district heating/cooling plant, The 8th International Conference of Enhanced Building Operation, Berlin, Paper No. 128a, 2008

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大阪ガスビルの空調設備既存ビルコミッショニング

コジェネレーションを備えた歴史的オフィスビルの環境性能の検証を実施

実施期間

2011年4月~2014年3月

実施担当

【発注者】大阪ガス
【CMT】中原信生(CA,CxPE)、松田則雄(CxPE)、山羽基(CxTE)、田中英紀、青木浩一郎(CxPE)、畑中稔臣(CxPE)

施設データ

コージェネレーションを備えるオフィスビル竣工は1933年で文化財に登録された歴史的建物のコミッショニング調査フェーズまでを実施した。

コミッショニング対象設備の概要

280kWの発電機を2台もつコージェネレーションシステムが設備され、ジェネリンク冷凍機400USRT×2台、ガス直焚き冷凍機500USRT×2台で構成される。竣工当初は2重ダクト、インダクションユニット方式が採用されこれをファンコイル併用空調方式に改修している。

コミッショニングの概要

調査フェーズまでのコミッショニングであり、設備の運転状態の現状を確認して、改善方法を提案した。設備改修直後、直近4年間のBEMSデータを分析し、熱源の運転状態、総合エネルギー効率*の経年変化を求めた。2次側設備は、既設のダクトシステムを利用しており運転状態の検証がなされておらず、簡易測定を行い混合損失量の推定を行った。総合エネルギー効率は通年で70%程度を実現しているが、中間期に低下するので排熱利用による効率向上、外気導入量の適正化、ファン風量の適正化、混合損失の防止の提案を行った。

成果発表

・松田則雄 他:コ-ジェネレーションシステムを持つ既設ビルの空調設備の性能検証、(第1報) コミッショニングプロセスの適用と評価の在り方について、空気調和・衛生工学会学術講演会講演論文集 2013、8号、pp. 73- pp.76

・畑中稔臣 他:コージェネシステムを持つ既設ビルの空調設備の性能検証、第 2 報 熱源・エネルギーシステムのデータ解析による評価 、空気調和・衛生工学会学術講演会講演論文集 2013、8号、pp. 77- pp.80

・青木浩一郎 他:コ-ジェネレーションシステムを持つ既設ビルの空調設備の性能検証、第3報 空調システムの運転実績と省エネルギー性能の評価、空気調和・衛生工学会学術講演会講演論文集 2013、8号、pp. 81- pp.84

・田中英紀 他: コージェネレーションシステムを持つ既設ビルの空調設備の性能検証、(第4報)運用実績に基づいたシステムシミュレーションによる性能評価、空気調和・衛生工学会学術講演会講演論文集 2013、8号、pp. 85- pp.88

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中部電力(株)熱田営業所既存ビルコミッショニング

事務所ビルへの本格的な既存ビルコミッショニングの適用。エネルギー消費の25%以上削減を達成

実施期間

2005年4月~2007年8月

実施担当

【発注者】中部電力
【CMT】中原信生(CA,CxPE)、松田則雄(CxPE)、一瀬茂弘
【設計者】蒼設備
【施工者】トーエネック

施設データ

電力会社の営業所での老朽化した熱源と空調設備の更新において、設計フェーズから既存ビルコミッショニングを実施した。

コミッショニング対象設備の概要

熱源機:空冷ヒートポンプチラー×2台、水冷チラー(排熱回収型)計220RT
冷温水槽600m3、冷水槽200m3
ダクト・ファンコイル併用方式(方位別に空気調和機でゾーニング)

コミッショニングの概要

熱源と空調設備の改修において、改修工事の設計フェーズからコミッショニングを適用し、MicroHASP/TES for Windowにより最適な設計、運用計画を策定した。引渡し後に機能性能試験を実施し、その検証を行った。蓄熱槽でのショートサーキットの改善、空調制御の適正化を行い、室内環境の改善、改修前と比較して冬季69%夏季25%のエネルギー使用量の削減を実現した。

成果発表

・一瀬茂弘他、事務所ビルの空調設備改修プロジェクトへの復性能検証過程の適用に関する実践研究  第1報、空気調和・衛生工学会論文集、(No.153 pp 13-25)

・一瀬茂弘他、事務所ビルの空調設備改修プロジェクトへの復性能検証過程の適用に関する実践研究  第2報 機能性能試験の枠組みと夏期における試行概要、空気調和・衛生工学会論文集、(No.160 pp 31-40)

・一瀬茂弘他、事務所ビルの空調設備改修プロジェクトへの復性能検証過程の適用に関する実践研究、第3報 機能性能試験の実行結果と実用化に向けての課題と考察空気調和・衛生工学会論文集、(No.174 pp 1-13)

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