コミッショニングQ&A

Q1)コミッショニングのメリットは何ですか?
Q2)これまでの設計や工事監理とコミッショニングは何が違うのですか?
Q3)コミッショニングが適用されるのは空調設備だけでしょうか?
Q4)コミッショニングプロセスを全て適用しないとコミッショニングを実施したことにはならないのでしょうか?
Q5)コミッショニングではやはり第三者のコミッショニングチームが組織されるべきなのでしょうか?
Q6)コミッショニングの実施には特別な資格が必要なのでしょうか?
Q7)コミッショニングの実施に任せておけば、要求性能に関して設計者・施工者は責任を持つ必要は無いのでしょうか?
Q8)コミッショニングに掛かる工事関係者の費用は建設費とは別に請求できるのでしょうか?
Q9)自治体では、コミッショニングを実施することを義務付けたりしていると聞きましたが本当ですか?
Q10)BSCAにコミッショニング業務をお願いすることはできますか

Q1)コミッショニングのメリットは何ですか?

A)建築物および建築設備が持つ快適性、安全性、エネルギー性能など、発注者が求める性能がライフサイクルに亘り発揮できるようになります。また、建築設備を最適に運用することにより真のサステナブルな建物が実現でき、かつ厳しさを増すエネルギー供給状況に対応する適切な対策を見出すことが出来ます。価値ある建物を求めることに対して、コミッショニングによって、発注者・設計者・施工者・運転管理者にとってwin-winの関係を築くことができます。

Q2)これまでの設計や工事監理とコミッショニングは何が違うのですか?

A)これまでの建築工程では、設計とその工事監理を通して一定レベルの品質と性能を確保するためのマネジメントが実施されてきました。ところが最近では、社会的な環境やエネルギーマネージメントへの要請も高くなり、発注者が、省エネ・省CO2・快適性に特化してより高いレベルの品質と性能を要求するようになってきています。コミッショニングはこの高いレベルの品質と性能の要求を実現するために、従来の建設工程に付加される支援マネジメントです。

Q3)コミッショニングが適用されるのは空調設備だけでしょうか?

A)空調設備以外にも、例えば、断熱や窓の日射制御、隙間風の抑制などといった建物の外皮性能に係わる省エネシステムや、防災設備、電気設備、衛生設備にもコミッショニングは適用することができます。例えば最近では事業継続性計画(BCP)に関わる電気設備の信頼性への要求は重要です。しかしながら多くの建物では、常時の運用エネルギーの大部分が空調設備で消費されているため、当協会では、当面、空調設備のコミッショニングを重要視して活動しています。

Q4)コミッショニングプロセスを全て適用しないとコミッショニングを実施したことにはならないのでしょうか?

A)BSCAでは新築および既存建物に対して標準となるコミッショニング過程(プロセス)を提示しています。提示している全てのコミッショニングプロセスを適用することが理想ですが、建設プロジェクトと協調して、発注者の要求を満たす範囲で、コミッショニングプロセスを適切に取捨選択して実施することが現実的であることが多いのも事実です。こうした場合、例え部分的、あるいは建設プロセス半ばからの実施であっても、適切な対応をとることで多くの実効が期待できます。

Q5)コミッショニングではやはり第三者のコミッショニングチームが組織されるべきなのでしょうか?

A)新築建物のコミッショニングは建設工程と並行して実施され、既存建物のコミッショニングは運用・保守管理状況を踏まえた調査・提案作業が必要なことなどを考慮すると、主たる業務に利害関係のあるチームではなく、利害関係が無い第三者で構成されるチームであるほうが妥当なことは理解できるでしょう。しかし、コミッショニングが発注者の要求を実現するマネジメントとして適切に機能するのであれば、第三者であることが必須であるとはいえません。「要求性能を確実に満たすことが最大の目的である」ことを念頭において、建設プロジェクトごとに適切なチームを組織することが大切です。

Q6) コミッショニングの実施には特別な資格が必要なのでしょうか?

A)現在、我が国ではコミッショニングの実施において、特別な場合を除き資格は必要ではありません*。しかしコミッショニングの実施には建築設備に関する高度な技術と豊富な知識・経験が必要となります。そのため、コミッショニングに携わる技術者は、例えば設備設計一級建築士、建築設備士、技術士、エネルギー管理士などといった、建築設備に関する資格をできるだけ複数有することが好ましいということになります。またコミッショニングに特化した技術と技能が求められることも重要です。そこで、当協会(BSCA)ではCxPE(性能検証技術者)の資格認証とCxTE(性能検証専門技術者)の登録制度を運用し、コミッショニングに特化した技術者を養成しています。

* 東京都条例によるコミッショニングでは特に資格を要求されてはいませんが、省エネ技術の中でも空調設備とその制御に関する知識と技術経験や分析評価の実績などに基づく技量も要求され、現実的には上述の資格要件とともにBSCAのCxPEやCxTEも要件に該当すると思われます。また、米軍施設などで米国式のコミッショニングが実施される場合には、米国のコミッショニング技術者資格、あるいはコミッショニングプロバイダーの認証が要求されることがあります。

Q7)コミッショニングの実施に任せておけば、要求性能に関して設計者・施工者は責任を持つ必要は無いのでしょうか?

A)コミッショニングはあくまで発注者の要求を実現するために実施される支援マネジメントです。つまり、要求性能を満たすための最終責任は、あくまで建設プロジェクトの主体者である設計者や施工者にあります。しかし、性能検証技術者、発注者、設計者、施工者を含むコミッショニングチームの協働作業としての責任は重要で、チームの合意のもとコミッショニングプロセスを実施し、共同で責任感を持って要求性能を実現してゆくことが大切です。

Q8)コミッショニングに掛かる工事関係者の費用は建設費とは別に請求できるのでしょうか?

A)原則として、コミッショニングの実施は建設プロジェクトとは別に発注者と契約を交わす委託業務となるので、コミッショニングに必要な費用は発注者が支払います。ただ、発注形態により、建設業務にコミッショニング業務を含むケースも考えられますが、コミッショニング業務は建物の引き渡し後に本格化することが多いので、できるだけ分離で発注するのが適切といえます。いずれにしろ、例えば建物引き渡し前後の時期に行われる機能性能試験は、コミッショニングが実施されるプロジェクトに特化して作成された性能検証仕様書に基づいて発注されるので、通常の建設業務とは別の業務発注にするべきとBSCAでは捉えています。

Q9)自治体では、コミッショニングを実施することを義務付けたりしていると聞きましたが本当ですか?

A)発注者が求める要求性能を実現することがコミッショニングの本筋ですが、自治体(東京都)ではこれを、建築物の省エネ・省CO2に対する社会的要請に対しても有効な取り組みであると認めています。東京都の環境確保条例に基づくトップレベル事業所の認定では、コミッショニングの実施が必須の評価項目にされています。外国では、米国のLEED認証やカリフォルニアの建築確認申請においてコミッショニングの実施が必須となっています。

Q10)BSCAにコミッショニング業務をお願いすることはできますか?

A)BSCAでは、まだ社会にコミッショニングが広く浸透していないため、これまでにも十数件の、先導的・先進的なコミッショニングプロジェクト、特定物件のコミッショニング実施のアドバイス、コミッショニングに関する調査・研究および技術支援事業などを受託してきました。こうした受託は今後も継続する予定です。またコミッショニング技術者が広く社会で活躍していただけるよう、BSCAに登録されているCxPE(性能検証技術者)やCxTE(性能検証専門技術者)を紹介しています。

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