コミッショニングレターVol.19 No.2(2月号)

2022/02/09掲載

2021年度BSCAシンポジウムin中部(報告)

2050年カーボンニュートラルの実現に向けた低炭素化社会を目指すには

 

新菱冷熱工業㈱、BSCA理事 田上賢一

2022121日(金)にCx事例シンポジウムin中部「-2050年カーボンニュートラルの実現に向けた低炭素化社会を目指すには-」を開催した。開催は、各講師が一拠点に集まり「Zoom Webinar」を用い参加者全員には全てオンライン形式で配信した。参加者は講師6名、オンライン参加者72名の合計78名でした。

まず、中部担当理事の田上賢一(執筆者)よりご挨拶とシンポジウムの主旨説明をし、前半では2つの基調講演が行われた。一つ目は本協会の柳原隆司副理事長より「2050年カーボンニュートラルを見据えたCx適用の重要性」と題し、まずCOP21を受けての様々な検討結果により、エネルギー消費効率の改善、供給するエネルギーの低炭素化、電化促進が重要である点が示された。次に先駆的なCx事例紹介として「東京電力技術開発センター」でのCxの取組事例を具体的に解説頂き、結論としてカーボンニュートラル即ち低炭素社会の実現を目指すにはCxの役割が増々重要であると示された。

二つ目は、名古屋大学の田中英紀先生より「データ駆動型エネルギーマネジメントと分析評価のリフレーミング」と題して、まずは建物の企画・設計から建設、運用に至るまで運用データを活用し、OPRに求める性能の管理目標値を目指し、PDCAサイクルによるデータ駆動型エネルギーマネジメントが重要性である点が解説された。続いて運用データの分析過程おいて、物事を見る枠組み(フレーム)を変え、別の枠組みで見直す「リフレーミング」の手法について多数の具体的な解説がされ、結論としてカーボンニュートラル時代のエネルギーマネジメントと分析評価のリフレーミングの重要性と合わせ、低炭素社会実現にはCxプロセスが重要であるとの結論であった。

ここまで、前半の2つの基調講演が終了し、休憩時間を挟み、後半の2つのCx事例紹介の講演を行った。一つ目は中部大学の山羽 基先生により「既設建物のCx事例紹介 中部電力熱田のCx と文書ツール活用」と題し、既設建物のCxプロセスの内容について、まずはCxの初心者でも解り易いよう本協会出版の「Cxマニュアル」に照らし合わせ、事例建物のCxプロセスの内容が解説された。続いて本事例は既設建物の全フェーズに於いてCx文書が整理されている事から、各フェーズの登場人物と必要なCx文章を実際の作成文書と照らし合わせて解り易く解説され、Cxプロセスでは文書の整備が重要である事が示された。二つ目は、名古屋産業科学研究所の奥宮正哉先生より「新築建物のCx事例紹介 二つの大学建物(理系・中央熱源、文系・個別熱源)のトータルビルCx」と題し、まずは新築建物のCxプロセスの流れが説明され、事例の建物である名古屋大学における総合的なCxの位置づけである、省エネ・創エネだけではなくデザイン・機能性・安全性・審美性・減災・防災を含めた総合的なCxが重要である事が解説された。続いて、新築建物のCx事例紹介として、中央熱源システムの「研究所共同館」と、個別熱源システムの「CALE」の2つの建物について解説された。前者では企画・設計段階から運用に至る全フェーズでのフルCxの内容について、インハウスCxの体制や、会議体と必要文書の整理、Cx固有の文書である自動制御管理文書についての解説がされ、後者では、個別熱源システムにおいて、室内機が過大な容量選定にならないよう、負荷率-COPの検証により設備容量の適正化の余地がある事が解説された。

 まとめとして、Cxの導入効果のヒアリング回答例が示され、Cxプロセスを適用した事による便益があった事が明らかとなった。また、Cxは時間的・労力的に全ての可能性は検証でない点やCxは文書化が基本であり、検証のスピードアップも重要である事が示された。

 最後に4名の講演者をパネリストとし、山羽先生の司会により、Web参加者からの質疑をもとに、およそ40分間のパネルディスカッションが行われた。この時の質疑応答の内容や、各講師からの回答を含めたディスカッションの内容は、近日中に別途HPにて公開する事とした。

新型コロナウイルス感染拡大防止で、完全なオンライン形式での開催であり、担当の中部メンバーは初めての事で不安があったが、結果は大きなトラブルも無く盛況に終わり、有意義なシンポジウムであったと感じた。

 

 

<シンポジウムスケジュール>

司 会  名古屋大学大学院 環境学研究科都市環境学専攻 鵜飼真貴子

13:3013:40       ご挨拶と趣旨説明  田上賢一(BSCA理事) 

13:4014:10  基調講演12050年カーボンニュートラルを見据えたCx適用の重要性

                   柳原隆司(BSCA副理事長)

14:1014:40  基調講演2:データ駆動型エネルギーマネジメントと分析評価のリフレーミング

         田中英紀(名古屋大学大学院環境学研究科)

14:4014:50       質疑応答             

14:5015:00  -休 憩-          

15:0015:30  既設建物のCx事例紹介 中部電力熱田のCx と文書ツール活用           

山羽 基(中部大学工学部建築学科)

15:3016:15  新築建物のCx事例紹介 二つの大学建物(理系・中央熱源、文系・個別熱源)の

トータルビルCx  

奥宮正哉(名古屋産業科学研究所上席研究員)

16:1517:00  質疑応答及びパネルディスカッション          

司会:山羽 基(前出) パネラー(前出講師)

 

以上

CxPE座談会 大阪(その1)第1回

建築設備コミッショニング協会(BSCA)では、「Cxの普及並びにCxPEの活躍方法に関する意見交換会」としてCxPE座談会を東京、大阪(2回)にて実施いたしました。座談会の様子を今月号から9回にわたってCxレターに掲載いたします。

―座談会参加者―

吉田治典(BSCA理事長)、天野 雄一朗(四国電力㈱)、小林陽一(㈱安井建築設計事務所)

松下直幹(㈱コミッショニング企画)、辻裕伸(関西電力㈱)、本地川知行(三機工業㈱)

井守紀昭(㈱大林組)、大石晶彦(㈱大林組) 

 

【はじめに】

吉田:

この企画の目的として、CxPEの活躍の場という点で、CxPEの人数は増えてはいるが、Cxを銘打ったプロジェクトが我々が期待するほど伸びていないという現状があると理解している。様々な事由はあると思うが、実際、Cx的なプロジェクトはあるが、Cxと言ってもらえず協会としても歯がゆいと感じている。その辺りも含めて、CxPEを生かして世の中で活躍できるビジネス展開にして頂ける人がどんどん出てきてもらいたい。という思いでNPOが立ちあがっており、さらに加速する意味で幅広くディスカッションする場としてこのような座談会を活用してもらいたい。

 

Cxの普及、CxPEの活躍について】

辻:  

現在CxPE登録者は100人弱いるが、Cx業務で活躍している方はあまりいない。協会としてどうあるべきか、どうしていくべきか。を模索していかないといけない。

Cxを普及させていくにあたり、どのようなことが障壁になっているか。Cxを受け入れてもらえる方法、企業に在籍しているCxPEの資格保有の方々をどう活用していくと良いか。というポイントで議論出来ればと思う。

松下:  

一度体験してもらわない限りなかなか価値を理解してもらえないというのがあるが、一旦入っていくとリピートが起こり、必要なものだという理解が得られるという実感がある。最初にそこに至るまでの必要なことは、オーナーの理解を得ることであり、Cxをする事によりどれだけのメリットがでるか数値にして表す必要がある。プロセス自体が理解された時に次の大きなステップになっていく。プロセスという点を意識して進めるというところをオーナーも含めて経験することが大切と思う。

辻:  

Cxを知っているオーナーの方が少ないと思う現状で、とっかかりはどのような感じなのだろうか。向こうから言ってきてもらう形が多いのか、アプローチをかけていくのか。その辺りはどう進めているのか。

松下:  

自分の資質を理解してもらっている方より「エネルギー会社からこういう提案が出てきているがどうすれば良いか」という相談が入ってきた。建物を改修する際にオーナーとして何がやりたいのか、何を目標にするのかを対話形式で進めていき、掘り下げていったものをオーナー側に「考えている事はこういったものだろうか」という形にして示した。次にこれを「オーナーの考えを実現するにはその設計をする必要がある」とだんだんとCxとはどういうものかを理解していってもらった。

改修工事のときは、計画段階であれば、まず調査フェーズを行い、進めていくうちに気が付けば施工フェーズになっていった。

松下:  

メーカからの相談があった際に、会議にオーナーが参加という条件で説明に行き、データをもらい分析し、提示する。少しずつ進めていく先にリピートがある。

天野:  

自治体とは違う一般企業案件の対応かと思う。自治体は一般企業案件とは違う対応が必要かと思う。例えば、自治体からは下記のような相談を受けることが多い。

・省エネ法で困っていて改修工事したい。

・ゼロカーボンを目指しておりCO2排出量を下げたい。

・熱源改修する上で、空調熱源改修を上手くやりたい。

天野:

「相談事があるならば話をしに行きます」という形で入り方をしている。そうするとどこかで事例があるかという質問を頂くことが多い。大都市の場合、自治体に建築技術者がいるが、小さい都市では、建築技術者がおらず、やり方もわからないという状況が多い。データはあるが分析をしておらず、非合理的な運転をしている例も見受けられる。やはりCx関連の実績があると前に進める感触がある。

小林:  

大企業のネームバリューがあるので、実際に聞いてもらえるのではないだろうか。

天野:  

聞いてはもらえるが、そうでない場合もある。CxFに登録されていなくても、Cxをやっている会社はあると説明しているが、何かしらBSCAの後ろ盾があれば信頼はしてもらえると思う。

吉田:

BSCAとしては運営を充実して、色んな情報をアップデートして発信していかなければならない。

小林:

CxF登録料が高いと思っている。法人会員(賛助会員)にならなければならない。

吉田:

登録料は0である。賛助会員になる費用である。

辻:

賛助会員費用は年間20万である。

小林:

本来ならば松下氏のような会社が登録できると良いと思う。CxF登録会社を増やすのであれば賛助会員費用をもう少し抑えるのも良いと思う。

辻:

賛助会員のA(20万円)B(10万円)の枠の他に、もう少し安い枠を作ることも考えられるのではないか。

吉田:

賛助会員はA(20万)B(10万)であり、自治体は無料、大学も無料としている。

辻:

基本的にはBSCAと関係のない人、会社がCxF登録はできないことになっている。CxPEBSCA会員でなければ登録できないことになっている。安価な賛助会員枠を設定するということは、検討の価値があると思う。

松下:

無料でCxF登録をおこない色々な会社がやっているということを宣伝してもらう方が良いと思う。BSCAホームページのCxF企業には大企業がざっと並んでるので、恣意的な雰囲気がある。

吉田:

例えばBSCA会員であれば、シンポジウムで3回発表するとそれを基準としてCxFの登録するというように、クオリティを認めてCxF登録を行うということも考えられる。賛助会員になることすら外してしまうと意味がない。

小林:

自治体がCxの公募を行う際に、公的な団体というとBSCAとなるので、そこにCxFの登録をしているということは、今後、公募条件になってくると思う。Cxの普及を目指す意味でも、CxF登録をしやすいようにしてもらうと良い。

天野:

CxF登録が簡単にできる事と、Cx事例の実績があると良い。

辻:

BSCAホームページに事例は沢山載せたいのだが、ネタを提供してくれる会社が少ない。

吉田:

シンポジウムでたとえ10~15分でも発表してもらう。コンテンツを我々が探すのは見つけにくいがそこに応募してもらって全てBSCAHPにコンテンツとして載せていく。とすれば自動的に変わっていく。BSCAはコンテンツを蓄積していければ良いと思う。それほど負担にはならないのではないだろうか。

小林: 

シンポジウム等で発表するのは問題ない。むしろ宣伝になる。

辻:

Cxの普及というテーマではCxFの登録、事例をコミッショニング協会HPへの掲載、もしくはシンポジウムでの発表等、主にこの3点でこのテーマを終える。

第18期通常総会について

建築設備コミッショニング協会の第18期通常総会を下記の通り予定しております。

詳細については後日ご案内申し上げます。

 

開催日程: 526日(木) 1330~

開催場所: 未定

講演会、シンポジウム開催案内

    2021年度BSCAシンポジウムin東京―

コミッショニング(以下、Cx)のますますの推進を目指して、BSCACxPEが携わったCxプロジェクトのみならず、カーボンニュートラルに向けた取り組みなど、発注者(建物オーナー)、CMT、設計者、運転管理者などから、実践的な実例を発表いただき知見を共有したいと考えています。

 

□開催日時 2022224日(木) 10:0016:00 

□開催方法 TKP新橋カンファレンスセンターホール14AWeb併用(Zoomウェビナー)

□定  員 会場30名 + WEB参加120

□参 加 費 会員5,000 /人、非会員10,000 /人、学生1,000/

 (正会員・賛助会員 無料  ※当日無断欠席の場合、有料となります)

 

講演内容

  司 会  上谷勝洋(BSCA理事、東洋熱工業㈱) 

10:0010:10  趣旨説明  赤司泰義(BSCA副理事長、東京大学) 

10:1011:10 基調講演:「カーボンニュートラル実現に向けた需要家電力資源の活用のあり方」 小林延久(早稲田大学) 

11:1011:50 Cx事例:「東急電鉄空調設備CBM化検討のCx」 

山田信太朗(東急電鉄㈱)

11:5012:00 質疑応答

12:0013:00 休憩

13:0013:05 WEB参加者確認           

13:0513:45 1.大林組技術研究所本館における既存Cx事例 小関由明(㈱大林組)            

13;4514:25 2.蓄熱による省エネルギーと電力調整 佐藤文秋(九電工㈱) 

14:2515:05 3. 空調熱源を使ったデマンドリスポンス 実証と今後の課題 小澤浩

((一社)ビルディング・オートメーション協会) 

15:0515:15 質疑応答

15:1515:25 休憩   

15:2516:00 及びパネルディスカッション       コーディネーター:前出 赤司泰義 

 

 

活動実績 活動予定 他

◆協会活動実績 (2022/1)

  2022121日(金)、22日(土) 2021年度 CxPE資格研修会

  2022121日(金) 2021年度BSCAシンポジウムin中部

  

◆協会活動予定 (2022/22022/3)

2022216日(水) 2021年度第5回 企画運営委員会

2022224日(木) 2021年度BSCAシンポジウムin東京

 

◆編集者、編集長より

    今月号より昨年3回実施したCxPE座談会(東京、大阪その1、大阪その2)の様子を記事として掲載します。各座談会を3回に分けてCxレター10月号まで合計9回掲載する予定です。座談会ではCxPEのおかれた現状や悩み、建築設備業界の問題や将来が語られていますので、読み応え十分です。お時間のある時にお読みください。

 

   ◆企画制作

 編集者、編集長:大石(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)

 WEB版作成:小澤(建築設備コミッショニング協会 事務局)

 

※本誌に掲載した著作物の著作権は、特定非営利活動法人建築設備コミッショニング協会が所有します。許可無く複写転用することをお断りいたします。

お問合せメール:bsca_mail@bsca.or.jp(アットマークを半角に)

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