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ここに建築設備の性能検証(コミッショニング)過程の制度を確立し、建築及び建築設備の生産・維持保全活動のライフサイクルに亘る品質確保と運転管理の最適化、環境保全と省エネルギーの実現を目指して性能検証過程の指針を作成した。本指針は性能検証過程の基本的なあり方を記述したもので、建築設備全般に共通する事項を包含する。性能検証を実際に実施するためには、これとは別に、性能検証を実施するための技術的な内容を主眼とした技術マニュアル又はツールが用意される必要がある。これらは、建築設備の種類(空気調和設備・給排水衛生設備・電気設備、さらには自動制御設備・BEMS・各種機器設備などのサブシステム)ごとに必要に応じて準備されるのが望ましく、これらについても関係者が共通に利用できる基盤を確立することが望まれるが、これらについては、今後の作業とする。
以下、今回性能検証過程、とくに生涯性能検証過程の指針を提案する理由を列記すれば以下のとおりである。
1. 建物のストックの保全意識が大いに高まり、環境・エネルギー性能保持のために良好な生産・保全プロセスが一貫して行われることの重要性が認識されてきた。
2. エネルギーと環境保存の問題が危機的状況になり、とくに地球環境汚染問題が急速に浮上し、建物のライフサイクルエネルギー、ライフサイクルCO2の最小化への要請が強化されてきた。
3. 環境・エネルギー・品質確保と言うキーワードがISO規格(ISO9000シリーズ、14000シリーズ)の普及と結びついてグローバルに展開し、建設業界においてもその取得が急速に浸透しており、客観的な性能保証への取組みが日常化し、違和感を取り除きつつある。
4. 我が国の民生用エネルギー消費が依然として伸びつづけており、この抑制には、省エネルギー設計の導入とその効果の確実な検証、竣工受渡し後の運転管理の最適化、さらにリニューアルにいたるまでのライフサイクルに亘った性能検証こそがその解決策であると思われる。
5. 規制緩和の国際的・国内的要請の下、性能発注(性能請負・性能契約)システムが確立されようとしておりこれを実現するには性能検証制度は必須の社会システムである。
6. ビル空調システムその他設備における運転制御の不具合がビルのエネルギーの多消費化と環境悪化、そして結果的には建物所有者の経営体質を弱体化している実状が各種の実態調査や研究によって明らかにされつつあり、経済停滞の一因にもなり兼ねない。
7. 欧米のみならず、東アジア地域の国々を含めてコミッショニング過程の制度確立への国際的な共通認識の高まりがある。そこで性能検証過程の国際共通認識の共有とわが国の文化・風習の良い部分を盛り込んだ性能検証過程の指針の作成が求められている。
8. わが国の現在の建築技術者制度における設備技術者のおかれている矛盾した立場を克服しながらその技術力を社会に有効に役立てるためには性能検証技術者(コミッショニングオーソリティー、本書では性能検証責任者と定義している)という、設計家や工事請負者とは人格的に独立した新しい職能を確立すべきである。
9. 建設産業における理由無き値下げ、値切り競争、その結果水面下に進行するビル品質の低質化、技術力評価の不公正、技術者良心の喪失化の加速から脱却するには公平な第三者による性能検証過程の確立が必須の要素である。
10. 施工現場に存在する二種の衝動、一はビル最適化への前向き姿勢、二は利益追求のための手抜き志向の共存環境において、前者の特質を生かし後者の性向を抑制するためには合理的な性能検証過程の制度の確立に期待せざるを得ない。
本指針の立案は当学会コミッショニング委員会にて行い、実務的作業は二つの小委員会、すなわちコミッショニングツール開発小委員会、性能検証指針小委員会にて行われた。さらに本委員会と時期的に並行して運営されている、建築・エネルギーコミッショニング委員会(建築環境・省エネルギー機構)における国際エネルギー機関(IEA)に属するビル・コミュニティーシステムの省エネルギー(ECBCS)研究第40分科会(Annex40)における研究内容とできるだけ整合させるべく行われ、性能検証過程のフェーズ・段階分類と用語解説に当たっては殆どこれらを一致させることができた。
なお本書のほかに、主として米国のASHRAEの指針(案)やPECI
Model Commissioning and Guide
Specification等から抜き出し和訳し若干日本の事情にあわせるように調整した実行のための文書化のフォーマットや記載事項、そして日本における性能検証過程適用の経験から得た文書化のための資料をまとめた参考資料をまとめてあり、これらは当面の資料として活用可能ではあるが、将来さらにこれらの内容を微調整して技術マニュアル的な位置付けのもとに発行する予定である。
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