コミッショニングとは

建設業界向け

コミッショニング過程(プロセス)の種類

コミッショニング過程(プロセス)の種類は、専門家の間では以下のように区分して呼んでいます。

  1. 当初コミッショニング(Initial-Commissioning)
    新築の建物(大規模な建物改修も含む)に対して、その企画から引き渡し段階(竣工後1~2年の瑕疵期間を含む)に亘るコミッショニングを指すものです。その成果記録は、その後の復コミッショニング時に、重要なリファレンス(参照情報)として利用されます。
  2. 復コミッショニング(Retro-Commissioning)
    既存建物既存建物に、始めて適用するコミッショニングを指します。既存建物既存建物の設計図書は失われていることもあるし、例え残されていても既に現況と一致しないこともあります。そのため、復コミッショニングでは、まず最初に現状の運用性能を分析し、より適切な運転にするために必要な改修や調整方法、ならびにや運転の最適化方策、ならびに設備の改善策の提案を提案し、この実現を目指します。
  3. 継続コミッショニング(Continuous-Commissioning)
    当初コミッショニングや復コミッショニングを終え、定常的な運転段階に入ってから連続的に適用するコミッショニングを指しますが、通常の運用・管理とは異なり目的が特化した業務です。

コミッショニングとは

コミッショニングは、大きく2つに分かれます。

  • 一つは新築建物のコミッショニング、もう一つは既存建物のコミッショニングです。
  • 新築建物のコミッショニングとは、ビルのオーナーやユーザーが求める建築設備への要求性能を文書としてまとめ、その要求通りに企画・設計され、建設され、運用されていることを検証する過程(プロセス)です。
  • 既設建物のコミッショニングとは、現状の運用性能を分析し、より適切な運転にするために必要な調整や改修、ならびに運転の最適化を提案し、性能検証して実現するプロセスです。
  • 専門家の間では、英語の訳から、前者をイニシャル・コミッショニング、後者をレトロ・コミッショニング*ということもあります。

*正確には、以前にコミッショニングがなされていない既存建物のコミッショニングをこのように定義しています。


※クリックで図を拡大します

新築建物のコミッショニングとは 既存建物のコミッショニングとは

コミッショニングの特徴

  • コミッショニングは、建物のオーナーやユーザーが求める要求性能を実現するために従来の建設工程に加味される過程(プロセス)です。この過程(コミッショニングプロセス)を適用することを「コミッショニングを実施(適用)する」と言います。
  • コミッショニングの実施は、コミッショニングオーソリティ(CA:性能検証責任者)を中心としたコミッショニングチームを組織し、発注者の要望・要求を具体的に文書でまとめることから始まります。
  • 新築建物のコミッショニングでは、コミッショニングチームは建設工程の各段階において、建設中の建築・設備や各種の図書に対して助言・レビュー・確認作業を行い、この要求性能の実現に向けたマネジメントを実施します。
  • 新築建物のコミッショニングを実施すると、建設プロジェクトに係わる発注者・設計者・工事監理者・工事請負者・運転保守管理者の間で確実に情報が共有できるので、性能実現のためのそれぞれの役割や責任範囲が明確となりトラブルやクレームが減ります。そして建物の完成後は、要求性能が確実に達成される建物として引き渡され、運転・保守管理もスムーズに始められ、発注者からの信頼を得ることができます。
  • 既存建物のコミッショニングでは、コミッショニングチームが中心となって、現状の運用性能を分析し、より適切な運転にするために必要な改修や調整方法、ならびに運転の最適化方策を提案し、この実現に向けた作業を統括します。
  • 既存建物のコミッショニングを実施すると、ビルの性能が向上して省エネルギー・省CO2、省コストが実現できるとともに、適切な運転・保守がなされることから設備の寿命も増すと言われています。
  • コミッショニングの実施には特化した技術が必要です。コミッショニングチームを構成する中心的メンバーはこうした技術に精通していることが不可欠です。当協会では、こうした技術者を世に送り出すため、性能検証技術者(CxPE)の認証と性能検証専門技術者(CxTE)の登録制度を運用しています。
  • コミッショニング実施には別途のコストが必要ですが、性能実現に向けた適切なマネジメントがなされるので、トータルコストは削減されると言われています。

※注:当協会では、現在、世界が抱える最大の課題であるエネルギー問題に着目し、建築設備性能のうち主として省エネルギー・省CO2・快適性・信頼性の要求性能に重点をおいています。

コミッショニングのメリット

コミッショニングを実施することによるメリットは下記のようにまとめることができます。

◆発注者にとってのメリット

  • 発注者やユーザーにとっての要求性能を文書で明確にすることができ、その性能を満足する建物と設備を受け取ることができます。
  • 通常の設計・施工プロセスで建設されたビルよりも、システム性能・機器性能が明確に文書化されデータベース化が徹底しているため、合理的な運用・保守管理(メンテナンス)が可能であると共に、将来の改修や保全が容易になります。その結果、建物のライフサイクルコストの低減にもつながります。
  • テナントに対しても社会に対しても適切な環境・エネルギー性能が提供でき、建物の不動産価値が向上します。その結果として、適正なテナント料が請求できます。
  • 地球環境の保全が達成でき建物として社会貢献ができます。

◆設計者にとってのメリット

  • 設計品質が向上します。
  • 設計に対する要求が明確になり設計作業が合理化できます。
  • 設計者としての役割・責任が明確になりトラブルが減少します。
  • 品質とコストが明確に説明でき、設計性能の曖昧さがなくなります。
  • 設計不具合のリスクが減り、設計ミスに対する保険料の低減につながります。
  • 設計業界がコミッショニング業界へ展開する足がかりとなります。

◆施工者にとってのメリット

  • 工事中のトラブルや手戻り工事などが減ります。
  • 引き渡し後の瑕疵担保工事、クレーム対応工事が減ります。
  • 試運転調整とシステムの最適化・機能性能向上との分界点が明確になり、工事費用の曖昧さがなくなります。
  • クレーム処理などにおいて、コミッショニングチームの記録をもとに発注者と明解な対話ができます。
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