コミッショニングレターVol.25 No.6(6月号)
2025/06/12掲載
第21期通常総会 開催報告

建築設備コミッショニング協会の第21期通常総会が下記の通り開催されました。
今年度の通常総会並びに講演会は、実会合・オンライン併用のハイブリッド形式で開催となりました。
また、講演会終了後に技術交流会を開催しました。
日 時 2025年5月28日(水)14時00分 ~
場 所 TKP新橋カンファレンスセンター 15階
◆総会
第21期総会は正会員227名のうち、総会出席者24名(正会員)、3名(正会員外)と委任状提出者70名の合計94名で定足数を満たしており適法に成立しました。その後、以下の議案の審議がなされ、すべての議案が議決されました。
・第1号議案「第21期事業報告及び収支決算に関する事項」
第21期事業についての報告と収支決算報告、ならびに監査報告がありました。
事業執行に対する収支決算報告がなされた後、適切に処理されているという監査報告があり、本議案が承認されました。
・第2号議案「第22期事業計画(案)及び予算(案)に関する事項」
第22期事業計画案が説明されました。
事業計画案の説明後、予算についても説明がなされこれらが承認されました。
・第3号議案「役員の選任に関する事項」
理事退任に関する事項、理事新任に関する事項の説明があり、これらの事項が承認されました。その後、新任理事の山羽氏より挨拶が行われました。
◆理事会報告
総会後に行われた理事会での決定として、奥宮副理事長が新理事長に、赤司副理事長が副理事長を継続、山羽新理事が新副理事長に就任することが報告されました。また、柳原元理事を特別会員とすることも報告されました。
第21期通常総会 講演会報告
第21期通常総会の後に講演会が開催されました。本記事では講演会の様子をレポートします。
◆講演会1
「再生可能エネルギー熱利用の現状と将来に向けて」
笹田 政克氏(再エネ熱利用促進協議会 代表)
□要旨
・日本の再エネ熱利用は全体エネルギー消費の0.2%に留まっており、世界平均の4.8%と比べて非常に低い状況がある。太陽熱は主に家庭部門での給湯利用、地中熱は業務部門での冷暖房利用、バイオマス熱は産業部門での利用が多い。
・再エネ熱に共通して、熱需要の大きな施設、建物の中で熱需要の大きなゾーンに対して、再エネ熱をベース運転させてコストパフォーマンス上げていくことがひとつのポイントとなる。
・再エネ熱種毎の留意点として、太陽熱は日射条件(積雪条件も含め)、地中熱は地中採放熱のバランス、木質バイオマス熱は燃料の安定供給を考慮した導入が必要になります。
・地中熱利用促進協議会では、コミッショニングに関する取り組みとして施工管理マニュアルを作成し、システム評価の方法を提供している。
・国のエネルギー基本計画や温暖化対策実行計画において再エネ熱の導入拡大が記されている。
□質疑
・地中熱利用のコミッショニングとして、採熱側と熱供給側のWTFモニタリングのお話がありました。他の熱源と比較する場合に、採熱側のWTFに気を配ってモニタリングが必要かと思います。ご知見あれば、ご教授ください。
⇒ご指摘の通り、採熱側の熱搬送効率を高めることが重要になります。実運用として温度差が小さく動いているものもある。設計時においては、温度差をどのように設定するか。運用時においては、変流量ポンプを効果的に運用すること。これらが日本でも良くなってきていると感じている。
◆講演会2
「リアルタイム電力料金制へ適応するビルマルチ空調設備のAI制御」
蜷川 忠三氏(N研究所(株)代表取締役/元岐阜大学教授)
□要旨
・再生可能エネルギーの電源が増えるカーボンニュートラル時代における電力インフラの考え方から、需要側制御が重要になる。
・需要側制御の方法として、現在のデマンドレスポンスは30分〜1時間単位の比較的長い時間での調整であり、本研究では再生可能エネルギーの変動に追従できるような5分程度の短い時間での制御を取り扱うことを示しました。手法として、1つ目はリアルタイムプライシング(RTP)で、10分単位で電力料金単価を変動させて間接的に需要を制御する方法で米国などの事例を紹介されました。2つ目はファストオートメイテッドディマンドレスポンス(FastADR)で、人間の介在なしに自動的に通信して制御する方法に大別されます。
・FastADRの制御対象として、全国に約180万台あるビルマルチ空調機(合計1800万キロワット、原発18基分相当)を活用した電力需要調整の可能性を示す。
・従来の設定温度シフト方式ではなく、インバーターに直接電力制限指令を出す方式の研究を行い、5分単位での精密な電力調整が可能になる。また、強化学習を用いたAI制御や、多数のビルマルチを集約して制御する「動的平衡」の概念も紹介されました。
・N研究所を設立し、ビルマルチのエミュレーターを開発して研究を継続していることも紹介されました。
□質疑
・デマンド制御対象機器の選定と室温上昇について、実際に稼働させる際の制御対象機器選定は、室内温度上昇についてAI予測などを用いる必要がありますでしょうか。
⇒ご質問の課題について、対象数を増やすことで解消することを考えています。10階建てビル1棟ぐらいですと、やはりあのあちらを立てればこちら立たずとなると思います。それが10棟とか50棟にすることが1つになります。もう1つは、システムインテグレータ的な発想だと、室温上昇に関するヒアリングが必要になりますが、ビルマルチ設計者的な発想でいけば、0.5度程度の温度上昇は確率的に常時発生している状況になります。デマンド制御継続中に0.5度を超えた温度上昇があった時には、その系統を中止しても影響が大きくない細かな制御単位(セル)を設定して、室温上昇が0.5度を超えたセルの制御中止というシンプルな制御で計画しています。これにより、実際に稼働させる際は高速通信があれば、圧縮機側への通信量も少なく、高速に情報伝達できるという研究になっています。
・アグリゲーター側の大量演算によるデマンド制御と建物側のローカルなデマンド制御(例えば太陽光発電連動エコキュート)とがうまく演算コストを分け合えることが考えられますが、講演にあった圧縮機を直接制御する方式は、アグリゲーター側が製造者仕様に追いつくのが大変だと思います。このような役割分担について統合的な仕掛けの可能性はいかがでしょうか。
⇒圧縮機制御は、技術的には非常に簡単で、室内機と室外機との間でやりとりする信号と同じものを使います。ただ、製造者を問わないインターフェイスというものは未だありません。研究のポイントは、デマンド抑制値の商品化のためにはデルタキロワットの提供が重要と考え、設定温度や蒸発温度による間接的な制御でははいことです。電気学会のJEC-TRでは製造者各社も参加しているので、ある程度実現の可能性があるかと思います。
講演会写真 (左写真:笹田氏、右写真:蜷川氏)


第21期通常総会 技術交流会報告
第21期通常総会終了後、技術交流会が開催されました。本記事では技術交流会の様子を報告いたします。
◆技術交流会
技術交流会では、奥宮新理事長より総会を総括する挨拶とコミッショニングの展望が語られた。来賓の公共建築研究所シニアアドバイザー時田氏より乾杯の発声があり、会員同士の交流を深める場として盛況となった。また、「建物所有者向けの建築設備コミッショニングガイドライン」策定における協力関係団体からの来賓からもコミッショニング業務へ寄せる期待が述べられた。最後に、21期CxPE資格登録者3名が今後の抱負と協会員全体の発展を祈念し、赤司副理事長による閉会の挨拶で締めくくった。
講演会写真 (左写真:CxPE資格登録者、右写真:赤司副理事長 閉会挨拶)


2025年度 CxTE講習会 開催のお知らせ
第14回となる講習会を、昨年度に引き続き「Zoom」によるオンラインで開催致します。機能性能試験や設備運転適性化などの検証業務を実行するCx専門技術者として、スキルと資質を修得できる講習会です。設備設計施工に携わる技術者、運転管理の技術者、エネマネ事業に携わる方、建築設備の勉強をされている学生の方等、全国各地からのご参加をお待ちしております。
第14回 BSCA CxTE 講習会【講習プログラム】WEB開催(全国)
◆ 講習日時 : 2025年 7月18日(金)
◆ 開催時間 : 9:00~16:30 ZOOMを利用したオンライン講習会
◆ 参加定員 : 60名 (ZOOM最大100名)
◆ 参加費用
個人正会員:A・B両方受講の場合 10,000円,AのみBのみ片方受講の場合5,000円
※賛助会員企業からは2名まで受講費無料、3名目から上記の受講料となります。
一般 :A・B両方受講の場合 20,000円,AのみBのみ片方受講の場合15,000円
※学生の方 A・B両方でも片方でも5,000円
◆ 講習会プログラム
講習項目 |
時間 |
枠 |
講師 |
講習概要 |
受付 |
9:00~9:15 |
15分 |
CxTE-Aに申し込まれた方の参加確認と通信状況確認 |
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はじめに |
9:15~9:20 |
5分 |
司会進行:上谷勝洋(東洋熱工業) |
スケジュール・留意事項等について
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講習1 CxTE-A 講習
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9:20-10:10 |
50分 |
計測技術 上谷 勝洋 (東洋熱工業) |
TE-Aの業務全般の解説と、必要な計測技術とそのレベルを具体的に理解する。 |
10:15-11:05 |
50分 |
性能検証事例(水系性能検証) 小野 永吉 (鹿島建設) |
実際の空調システムにおける水系・空気系システムの例を示しながら、性能検証のためデータ分析手法についての具体的な技能について理解する。 |
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11:10-12:00 |
50分 |
性能検証事例(空気系性能検証) 田上 賢一 (新菱冷熱工業) |
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講習2 Cx過程 全体講習 |
13:15-14:00 |
45分 |
TE-A,Bの定義 Cx業務過程全般について 上谷 勝洋 (東洋熱工業) |
TE-A,Bの業務区分・要求技能についての概要と、 Cxプロセス全般について、その基礎知識について解説し理解を求める。この講習はTE-A・Bとも受講が必須です。 |
講習3 CxTE-B 講習
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14:05-14:45 |
40分 |
TE-B業務フロー概要 中村 北斗 (梓設計) |
TE-Bは大量のデータを扱う整理・分析に加えて、シミュレーション技能も要求される。本講義ではまずTE-Bに課せられる資質を、可視化手法を通して理解する。 |
14:50-15:35 |
45分 |
データ整理・可視化分析 山田 一樹(日建設計総合研究所) |
Cx共通形式、データ整理業務フローを説明して、Cxにおけるデータ整理・分析業務の手順について、デモを通じて理解する。 |
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15:40-16:25 |
45分 |
シミュレーション技術 山田 一樹(日建設計総合研究所) |
Cxでのシミュレーション活用の意義を解説して、デモを通じて内容を理解する。 |
* TE-Aは講習1・2、TE-Bは講習2・3の受講が必要です。TE-AとTE-Bの両方を受講することもできます。
* この講習は「建築 CPD 制度認定対象プログラム」「空気調和・衛生工学会CPDシステム」の 対象プログラム
です。各CPD登録者は、受講会場の受付で、CPDの申告をしてください。
活動実績 活動予定 他
◆協会活動実績 (2025/5)
2025年5月8日 BSCA第1回企画運営委員会
2025年5月13日 国土交通省Cx事業 第1回推進委員会
2025年5月28日 第21期通常総会
◆協会活動予定 (2025/6~2025/7)
2025年6月5日 事務局WG
2025年7月18日 BSCA第14回CxTE講習会
◆編集者より
ここのところ、暑くなったり急に寒くなったりと不安定なお天気が続きますが、6月に入りいよいよ梅雨入りの季節となります。雨降りで高温多湿になる雰囲気があまり好きではありません。世間では備蓄米の放出などコメ問題で大騒ぎですが、雨不足で米の不作だけは避けたいところですが、雨量は神のみぞ知る事で予想ができません。気象庁の見解では「2025年の梅雨期間は短い傾向で、総雨量は平年並か多い予想」だそうです。さて、結果はどうなるのでしょうか?
◆編集長より
大阪府茨木市に「ダムパークいばきた」という公園?があります。公園の中にはGODA BRIDGE(ゴウダブリッジ)という全長420mの歩行者用吊り橋があり、歩行者用吊り橋としては日本最長だそうです。茨木駅より車で20分程度ですので、関西在住の方は一度、その高さを実感されてはいかがでしょうか。ただし、吊り橋を渡るには通行料が必要です。(右下写真)
◆企画制作
編集者:田上(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)
編集長:大石(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)
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