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2004(H16)年度 受託調査研究
設立初年度より、当法人では社会啓発活動の一環としてコミッショニング過程に関する調査研究受託の獲得に力を尽くしています。
設立初年度の研究受託によって将来より大きなプロジェクトの受託が可能なように実績を蓄えることと、財政規模の拡大に役立てる目的もありました。幸い、下記の二件の調査研究を受託することができました。
蓄熱式空調システムの当初性能検証過程実践マニュアル(水蓄熱編)の作成
高効率エネルギー関連設備導入とその効果の確実な発言に向けた調査研究
蓄熱式空調システムの当初性能検証過程実践マニュアル(水蓄熱編)の作成

 委託機関:() ヒートポンプ・蓄熱センター(蓄熱関連情報の解析グループ)
 研究実施:20049月〜20053
 研究担当:松田則雄、中原信生

 多くの蓄熱システムが期待されたような性能を挙げずに運転されている実態も少なくないが、その原因はまさに企画から運転管理にいたる、性能規定の不備、設計内容の不適切、施工・試運転調整の不備、或いは制御システムの不備ないし誤動作、運転保守管理の不適切など、各種の要因とそれの組み合せが原因であった。蓄熱システムに関して言えば、それぞれの各段階で最適な手続を踏むことに関してはヒートポンプ・蓄熱センターが整備してきた各種マニュアルやプログラムを駆使すれば良いのであるが、建設プロセス全体を通してその性能実現を管理することができなければ、接続点における食い違いや勘違いが結果として大いなる欠陥を生みことになる。また工期の圧迫によって試運転調整がおざなりになってしまったり、各プレーヤーの役割分担が不明瞭なままに推移して大きな落とし穴が待っていたりして、トータルとして最適なものがオーナーに引き渡され、運転保守管理者がよりどころとすべき文書も整理されないままに運営状態に入ってしまうことが最終的な難点であった。もちろんこれは蓄熱システムのみのものでなく、建築生産される各サブシステムにも同様に適用される現象で、そこに性能検証過程導入の必要性が認識されてきたのであるが、蓄熱式空調システムという技術的に高度で興味深いサブシステムはまさにその一つのケーススタディーとして典型的な題材を与えるとともに、それ自体として蓄熱システムの効果を最大限に発揮するように活用することが出来るであろう。

 本調査研究は、前2年度に亘って同センターの委員会にて作業されてきた「蓄熱式空調システムの性能評価及び性能検証(略称、蓄熱コミッショニング)」を社会普及啓発用にマニュアル化したものである。ここではこの間に注入された新しい環境、すなわち、空気調和・衛生工学会の性能検証指針、Annex40で開発したMQCツールの利用環境の充実を踏まえてマニュアルとして構成を一新したものである。即ち、企画段階から定常運転段階に至るまで、学会指針付属書のプロセスフローに従い、蓄熱式空調システムの関連事項を組み入れて全面的に加筆修正を施したMQC/TESを活用して過程を進行させると言う流れに則った。これにより、昨年までは分離して進めてきたプロセス管理記述とMQCの内容を整合させ、かつ学会指針のフローを辿る、と言う記述スタイルを徹底させた。

本マニュアルは、大きく次ぎの4章と付録・資料とから構成されている。

1.蓄熱式空調システムと性能検証
2.性能検証作業の概要
3.新築建物の蓄熱システムの性能検証過程
4.新築建物の性能検証実施例

付録
資料

 1では、蓄熱システムにおける性能検証の必要性、性能検証プロセスの適用について述べ、検証ツールと資料の利用方法を解説した。2では、性能検証業務の全体の概要、組織体制、ツールとしてのMQCの位置づけと利用法について解説した。3が本書の中核部分であり、当初性能検証過程を想定して企画から運転管理に至る各フェーズ、段階ごとに性能検証業務の実際について記述した。4では、性能検証過程を実際に適用したケースを紹介し、実際に性能検証を進めようとする人達の理解を助ける資料とした。付録はマニュアルの本文では煩雑なため省略せざるを得なかった重要な用語・概念、ツール等の詳細などを載せ、資料では「建築設備の性能検証過程指針」など本マニュアルの理解に役立つ資料や本マニュアル中身を更に深く理解するための追加的資料のリストと所在場所などを掲載した。

 本マニュアル第一の利用者は性能検証責任者(CA)の役割を果たす者を想定するが、マニュアルには性能検証関連者の役割や業務も記述し、MQC/TESに含まれるデータベースの内容はCAに限らず蓄熱式空調システムのシステム構築、設計・施工及び試運転調整の責任者や運転保守管理の責任者にも利用されることを意図しており、技術レベルとしては建築設備士レベルを想定している。

 ヒートポンプ・蓄熱センターではこのマニュアルを用いて第一回の蓄熱コミッショニングの研修会を3月に開催した。この研修会は今後も開催されるので、BSCA会員も同センターのホームページの案内に応じて参加されることを期待する。

ヒートポンプ・蓄熱センターのホームページ
高効率エネルギー関連設備導入とその効果の確実な発言に向けた調査研究

     委託機関:() 日本ビルエネルギー総合管理技術協会(経済産業省委託)
     研究実施:20052月〜20053
     研究担当:中原信生

  省エネルギーの更なる徹底が叫ばれる中、民生部門のエネルギー消費は依然として毎年一定の延びを示し、省エネルギー目標達成上の一つの制約になっている。折から京都議定書の発効により、推進国であるわが国がその実現に向けての役割は極めて大きなものがある。然るに実際に建築物における環境の質とエネルギー消費の形態を見るに、必要且つ十分な環境を守りつつ最適なシステム設計とシステム運営・建物利用を行う、という努力が相変わらず不足していると言わざるを得ない。差し当たっての省エネルギー化の推進には現存する建物のエネルギー性能診断に基づく性能改良が手っ取り早いが、5年、10年以上の中・長期の展望の下に省エネルギ−、温暖化ガス排出低減化対策に基づく効果を持続させるにはこれから作られる建物のエネルギー・環境性能をいかに確実に実現していくかと言う社会システムが構築されなければならない。

  本研究は上記の問いに答えるべく、近年の建築性能検証による省エネルギー実現の手法として極めて有望とされているコミッショニングプロセスの導入につき、高効率エネルギー関連設備導入とその効果の確実な発現に向けた建築生産における当初性能検証(イニシャルコミッショニング)プロセスについての研究として、その考え方、国内外の展開状況、プロセスの進め方、建築発注者の判断の基準とすべき事項について取りまとめ、さらに過去になされた類似プロセスの事例の紹介、並びに今後の大規模プロジェクトをモデルとした、プロセス導入に当たっての具体的な実施方法についてのケーススタディーを取りまとめたものである。

  近年、建築設備、取り分けエネルギー消費と居住環境ならびに地球環境(地球温暖化物質排出等)に関係の深い空気調和・換気・エネルギー利用設備が、建築主に引き渡され施設運営に入ってから、予め予測していなかった各種の問題を発生してクレームを生み、顕在化しない場合でもエネルギー多量消費のまま推移していることが明らかになってきた。そのために、省エネルギーの観点から現存する建物の空調・電気・エネルギーシステムに対する省エネルギー診断やESCO業務が注目を浴びているが、システム自体が発注者の要望を十分に勘案し適切に設計・施工され完全に試験調整されて引き渡されたものでない限り、後でいかにしても初期性能の悪さを回復することは出来ないし、そのうえ経年とともに進行する性能劣化や、季節変動や居住スタイルの変動によるシステム再調整を行わないがための性能悪化、エネルギー多消費化は著しいものがある。また、ESCOその他の既存建物に対する現存の制度的な省エネルギー手法も、高度な技術を持つ第三者による公正な性能検証行為が無ければ実際の省エネルギー量を公平に同定することは不可能であり、ひいては発注者やESCO業者そのものばかりでなく、社会資本の低劣化に寄与してしまう。

  以上のことから、既設建物にしろ、新設建物にしろ、環境・省エネルギーに関する発注者が安心して任せることの出来る第三者機関である性能検証のための技術者を育成し活用することが必要である。取り分け新築建物においては、発注者の真に求めるところの性能要件を明確にし、その中で数々の専門的助言を行い、適切な設計と施工、試運転調整を経てその性能が実現し、設備運転監理者が正しくかつ安心して運転保守できるように建設プロセス全体に渡す性能規定とその実現の過程を、技術的にも工程的にも、確実な査閲と確認、文書化と情報伝達を行いつつプロセスをマネージするコミッショニング技術者 (性能検証責任者、CA)が必要である。

 このようなコミッショニングプロセスの必要性は既に1960年代から米国・英国において認識されてきたが、1980年代に至るまではそれは試運転調整プロセスの充実という形を取ってきた。然しながら空調・エネルギーシステムの高質化・複雑化・多様化するに至ったにも拘らず、検証すべき性能そのものの規定が曖昧であることによる問題が多いことが認識されて、ここにプロセスとしてのコミッショニング(コミッショニングプロセス)の必要性が叫ばれて1989年に米国空調冷凍技術者協会(ASHRAE)により最初のガイドラインが策定された。PECIというNPOが米国における国策に基づくコミッショニングの実務資料作りと全米コミッショニング会議(NCBC)1993年より主催、1990年代初めにDOE(エネルギー省)が策定した国家再建計画: Rebuild Americaにおいてコミッショニング採用による省エネルギー化の効果について定量化しこれを極めて有効な手段として位置付け、そのための戦略を立てた。またGSA(連邦調達庁)が建物発注のプロセスにコミッショニングを取り入れることとしその手続や文書化の有り方を明確化、2000年に入ってからは持続可能ビルの認証制度LEEDが発足し、認証の前提条件の一つにコミッショニングプロセスの採用を規定し、そしてこのLEED制度の普及が始まるに及んで、コミッショニングプロセスの採用が少なくとも公共建築においては常識として理解されるようになり、民間分野でも適用が増えつつある。
 わが国では空気調和・衛生工学会に設置されたコミッショニング委員会において「建築設備の性能検証過程指針」を20043月に取りまとめた。米国に遅れること15年であるが、この間に実プロジェクトにおいて新築建物のコミッショニング過程の実証が行われた。また、厳密には性能検証過程では無いが、実質的に同様の性能規定と性能実現の過程を踏んで極めて好成績なエネルギー効率を実現した地域冷暖房プロジェクトの実例、そして今後展開されようとする新築建物へのイニシャルコミッショニングに対する適用の在り方の試案などを、後半の実例の部において紹介している。このほか、IEA/ECBCS/Annex40の国内研究委員会(建築・環境省エネルギー機構:建築・エネルギーコミッショニング委員会)にて開発され、()ヒートポンプ蓄熱センターにおける「蓄熱式空調システムのコミッショニングマニュアル」において展開されたコミッショニング過程管理ツールMQCは建築ないし地域におけるエネルギーシステム最適選定プロセスのための情報を包含しており、本書にはこれら最新の成果に基づく記述がなされている。目次は以下のとおりである。
目次
1.背景
2.発注者の要求を十分に実現するスキームのあり方について
3.建築の各フェーズにおける具体的な措置事項について
4.省エネルギーの視点からの各フェーズにおける発注者の判断の基準
5.コミッショニングプロセスの実施例
5.1.晴海アイランド地区熱供給施設のコミッショニング的プロセスの事例
5.2.山武環境技術センターのコミッショニングプロセス実施例
6.Nプロジェクトモデルによるケーススタディー
2005(H17)年度 受託調査研究へ
2006(H18)年度 受託調査研究へ

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